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保険自由化が生命保険業界に与えた影響

  • 4 時間前
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戦後、日本の保険業界は長らく「護送船団方式」のもとで発展してきました。各社の商品には大きな違いがなく、生命保険といえば営業職員(生保レディ)が家庭を訪問し、一人ひとりに保険を提案するという販売スタイルが当たり前の時代でした。


1996年の保険業法改正を契機とする「保険自由化」は、その常識を大きく変え、医療保険やがん保険では外資系を含む生保会社・損険会社が競争するようになり、銀行でも生命保険が販売されるようになりました。さらに、来店型保険ショップやインターネット販売が普及し、契約者自身が複数の商品を比較して選ぶ時代へと変化していきます。


今回は、1990年代以降の保険自由化が生命保険業界にもたらした変化を「制度」「商品」「販売チャネル」という視点から振り返ります。



1. 「営業職員」が主役だった時代(~1995年頃)


戦後から1990年代半ばまで、日本の生命保険業界は護送船団方式のもとで運営されていました。監督官庁による厳しい行政指導の下、各社は横並びで事業を行い、価格競争や過度な商品競争はほとんどありませんでした。販売の中心は営業職員であり、生命保険会社は全国に営業職員網を築き、一軒一軒家庭を訪問して保険を普及させていきました。生命保険へ加入することは「営業担当者から勧められて加入すること」とほぼ同じ意味だったと言ってもよいです。

販売される商品も終身保険・養老保険・定期保険が中心で、現在のように医療保険やがん保険を比較して選ぶという考え方は一般的ではありませんでした。当時は「どこで加入するか」よりも「誰から加入するか」が重視される時代だったと言われてます。


2. 1996年 保険業法改正がもたらした4つの変化


1996年の保険業法改正は、日本の生命保険業界にとって大きな転換点となり、金融ビッグバンの一環として実施されたこの改正により、市場には競争原理が導入されます。生命保険業界では、特に4つの変化が大きな意味を持ちました。


① 生損保の相互参入

それまで生命保険会社と損害保険会社は、それぞれ自分たちの分野のみを扱うことが原則でしたが、保険業法改正により、子会社方式で相互参入できるようになります。現在の東京海上日動あんしん生命や損保ジャパンひまわり生命など、多くの損保系生命保険会社が誕生した背景には、この制度改正があります。


② 第三分野(医療・がん保険)の本格競争

自由化を象徴する出来事として、第三分野の開放があります。第三分野とは、医療保険・がん保険・介護保険・就業不能保険など、生保・損保のどちらとも言えない分野を指します。日米保険協議では日本市場の開放が大きなテーマとなり、一定期間の「激変緩和措置」を経て、生保・損保双方による本格的な競争が始まりました。これまで限られた会社が扱っていた医療保険やがん保険は、多くの会社が保障内容や保険料を競い合う市場へと変わっていきます。今日これらが生命保険の代表的な商品となっている背景には、この自由化があります。


③ 銀行窓口販売への道

自由化は販売チャネルも変えました。2001年から銀行で生命保険を販売できるようになり、販売可能な商品が段階的に拡大され、2007年には原則全面解禁となります。銀行では一時払い終身保険・個人年金保険・外貨建保険・変額保険など、資産形成や相続対策を目的とした商品が数多く販売されるようになりました。営業職員とは異なる、新たな販売チャネルの誕生でした。


④ 契約者保護制度の充実

競争が激しくなる一方で、契約者を守る制度も整備されました。ソルベンシー・マージン比率による健全性規制が導入され、保険会社には十分な支払余力が求められるようになります。自由化とは、単に競争を促すだけではなく、契約者保護を強化する改革でもあったのです。


3. 自由化が生んだ新しい競争


制度改革によって、生命保険市場にはさまざまなプレーヤーが参入しました。アフラックのがん保険をはじめ、メットライフ生命・プルデンシャル生命・チューリッヒ生命などの外資系生命保険会社は、日本市場で独自の商品や販売手法を展開しました。営業職員だけでなく、代理店やコンサルティング営業など、新しい販売スタイルも広がっていきます。


商品面では各社が医療保険を競って開発するようになり、入院日額保障・手術給付金・先進医療特約・三大疾病保障など、保障内容は年々充実していきました。現在では「死亡保険より医療保険の方が身近」と感じる方も少なくありません。一方で、自由化とほぼ同じ時期、日本経済はバブル崩壊を迎えます。高い予定利率で販売した契約が重荷となり、多くの生命保険会社は「逆ざや」に苦しむことになりました。この問題は後に複数の生命保険会社の破綻へとつながりますが、詳しい経緯は次回取り上げます。


3. 「保険を比較して買う」時代へ


自由化が最も変えたものは、保険の選び方かもしれません。2000年代以降、「ほけんの窓口」などに代表される来店型保険ショップが急速に普及しました。一社の商品だけではなく、複数社の商品を比較しながら相談できる仕組みは多くの消費者に受け入れられ、「どの会社の商品が自分に合うのか」を比較する文化が定着していきます。


銀行では資産運用や相続対策を目的とした生命保険の販売が広がり、退職金の運用や老後資金づくりを考える中高年層にとって、銀行で生命保険へ加入することは珍しいことではなくなりました。さらに、インターネット専業の生命保険会社も誕生し、ネットで保険料を比較してそのまま申し込みまで完結できる仕組みが、若い世代を中心に広がっています。こうして生命保険は、営業職員・保険ショップ・銀行・保険代理店・インターネットなど、さまざまなチャネルで加入できるようになりました。営業職員は今も重要な存在ですが、「営業職員だけ」の時代ではなくなり、契約者自身が自分に合った買い方を選べる時代になりました。


4. 顧客本位の販売へ


販売チャネルが増える一方で、比較の仕方は適切なのか、本当に顧客に合った商品を勧めているのかという課題も生まれました。これを受け、2016年の保険業法改正では、意向把握義務・情報提供義務・比較推奨販売に関するルールなどが強化されます。「なぜこの商品を勧めるのか」を説明し、その内容を記録することが求められるようになりました。保険会社や代理店には「売ること」だけではなく「顧客本位で提案すること」が強く求められる時代になっています。


5. 現代の課題とこれから


2020年代に入り、生命保険業界は新たな課題に直面しています。長引く低金利環境により予定利率は大きく低下し、各社は外貨建保険や変額保険など資産形成ニーズに対応した商品開発を進めています。また、申込みから保全手続き、保険金請求までオンライン化が進み、対面とデジタルを組み合わせた販売スタイルが一般的になりつつあります。


さらに、世界でも有数の高齢社会を迎え、認知症保障・介護保障・就業不能保障など長寿社会に対応した保障へのニーズも高まっています。生命保険会社には、死亡保障だけではなく、人生100年時代に寄り添う商品やサービスが求められるようになっています。


【代理店から聞いた話】「保険会社を選ぶ」のではなく「保険を選ぶ」時代へ


以前、ある保険代理店の方がこんな話をされていました。「昔は『〇〇生命だから安心』という理由で加入される方が多かったですが、今は『医療保険はA社、死亡保障はB社』というように、商品ごとに比較して選ばれるお客様が本当に増えました」

自由化以前は、一人の営業職員から一社の商品に加入することが一般的でした。しかし現在では、保険ショップやインターネットを通じて複数社の商品を比較し、自分に合った保障を組み合わせることも珍しくありません。生命保険会社は「保険を販売する会社」から「選ばれる会社」へと変化してきたのです。


6. まとめ (30年の変化を一本の流れで)

時期

出来事

キーワード

~1995年

護送船団方式・営業職員中心

横並び・営業職員チャネル

1996年~

保険業法改正・生損保相互参入

金融ビッグバン・第三分野

2001~2007年

銀行窓販の段階的解禁

販売チャネルの多様化

2000年代

医療・がん保険競争、外資系・ネット生保の台頭

商品競争・比較購入

2010年代

保険ショップの定着・保険法施行・募集規制強化

顧客本位・比較推奨

2020年代

デジタル化・超低金利・高齢社会への対応

オンライン化・資産形成・人生100年時代


生命保険の自由化から約30年。かつては営業職員から勧められた保険に加入するのが一般的でしたが、現在では銀行、保険ショップ、インターネットなど、さまざまな方法で保険を比較し、自分に合った商品を選べる時代になりました。一方で、競争の激化は生命保険会社にとって新たな課題も生みました。高い予定利率で販売した契約による逆ざやは経営を圧迫し、1990年代後半から2000年代初頭にかけて複数の生命保険会社が破綻することになります。


次回は、その「生命保険会社の破綻と再編」について、日本の生命保険業界最大の転換期を詳しく見ていきます。







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