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契約者が法人となる生命保険

  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

1. 「保険の契約者が会社」とはどういうことか


生命保険というと、個人が自分や家族のために加入するものというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし実際には、会社が契約者となって生命保険に加入するケースも数多くあります。

経営者向けの保険や役員向けの保険について耳にしたことがある方もいるかもしれません。今回は、契約者が法人となる生命保険について、その仕組み・目的・個人契約との違いを解説します。


2. 契約者が法人となる生命保険とは


法人契約の生命保険とは、会社が保険契約を結び、役員や従業員など特定の個人を被保険者とする生命保険です。基本的な契約関係は次のようになります。


  • 契約者:法人

  • 被保険者:役員または従業員

  • 保険金受取人:法人または遺族


個人契約との大きな違いは、保険料を負担するのが会社であることです。また、保険金の受取人も契約目的によって異なります。事業保障を目的とする場合は法人が受け取り、福利厚生を目的とする場合は被保険者の遺族が受け取るケースもあります。

このように「契約者」「被保険者」「保険金受取人」が誰になるかによって、保険の目的も税務上の取扱いも変わってきます。この三者の関係については第2シリーズ第5回(責任開始)でも触れているので、あわせてご参照ください。


3. 法人が生命保険に加入する目的


経営者・役員への保障(事業保障資金)

中小企業では、経営者や役員が会社経営の中心を担っていることが少なくありません。万一のことがあった場合には、借入金の返済・事業継続・人材確保などに多額の資金が必要になります。その備えとして生命保険が活用されています。個人の「家族の生活を守る」という目的と並ぶ、法人契約ならではのニーズです。


勇退(退職)時の資金準備

役員退職金は企業にとって大きな支出です。生命保険を活用して解約返戻金を計画的に積み立て、将来の退職金原資として準備する方法が広く利用されています。「いざというときのための現金を、保険という形で積み立てておく」イメージに近いといえます。


事業承継対策

オーナー経営者の場合は、事業承継時に相続税や自社株の買取資金などが必要になることがあります。生命保険を活用することで、こうした資金需要に計画的に備えることができます。


福利厚生

法人が保険料を負担し、特定の役員や従業員に死亡保障・医療保障を準備するケースもあります。役員の福利厚生を充実させることで、人材確保や長期的な勤務促進にもつながることが期待されています。なお、全従業員を対象とする一括型の福利厚生保険については、次回(第7回:団体保険)で詳しく解説します。


4. 法人契約で活用される主な保険


終身保険

一生涯の死亡保障を備えながら解約返戻金も積み立てられる商品です。法人契約では、役員退職金の準備やオーナー経営者の相続・事業承継対策などに活用されることがあります。長期保有を前提に解約返戻金を育てていくというイメージが、退職金準備の観点から法人のニーズと合致しています。


養老保険

満期保険金と死亡保険金が同額となる保険です。法人契約では福利厚生制度の一つとして利用されることがあり、「ハーフタックスプラン」と呼ばれる活用方法も知られています。保険料の一部を損金算入できる点が法人にとってのメリットですが、税務上の適用には一定の条件があるため、詳細は専門家への確認が必要です。


定期保険

一定期間の死亡保障を確保する保険です。比較的少ない保険料で大きな保障額を設定しやすいため、経営者・役員に万一のことがあった際の事業保障資金として利用されることが多くあります。「保障を確保しながらコストを抑えたい」という法人のニーズに向いている商品です。


5. 個人契約との違い

比較項目

個人契約

法人契約

契約者

個人

法人

保険料負担者

個人(家計)

法人(会社)

主な目的

家族の生活保障・資産形成

事業保障・退職金準備・事業承継

保険金受取人

配偶者・子など遺族が一般的

法人が受取人となるケースも多い

解約返戻金の活用

個人の資金需要に対応

退職金原資・運転資金などに活用

個人契約が「自分や家族を守る」ことを中心に設計されているのに対し、法人契約は「会社経営を支える資金を準備する」という役割を担っています。同じ生命保険でも、契約者が法人になることで目的も活用方法も大きく変わります。


6. 経理処理と税務の基本的な考え方


① 保険料の取扱い

個人契約では、支払った保険料は一定の範囲で生命保険料控除の対象となります。控除には一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3区分があり、それぞれ控除額に上限が設けられています。所得税・住民税の負担を軽減できる点が個人にとってのメリットです。一方、法人契約には生命保険料控除はありません。代わりに、保険料の一部を損金算入できる仕組みがあります。ただし商品の種類や契約形態によって扱いが異なります。


  • 死亡保険(定期保険・終身保険など):最高解約返戻率を基準として、保険料の一部を資産計上し、一部を損金算入する仕組みです。全額を損金にできるケースは多くありません。

  • 養老保険(ハーフタックスプランの考え方):福利厚生目的など一定の条件を満たす場合、保険料の50%を福利厚生費として損金算入し、残り50%を資産計上する方法が用いられることがあります。


個人契約

法人契約

保険料の税務

生命保険料控除 (所得税・住民税)

商品に応じて一部損金算入・一部資産計上

控除・算入の上限

各区分に上限あり

最高解約返戻率や契約形態によって異なる


② 保険金・解約返戻金の取扱い

個人契約では、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって課税される税金の種類が変わります。

契約形態

課税の種類

契約者=受取人(被保険者が別人)の場合

所得税(一時所得または雑所得)

法定相続人が死亡保険金を受け取る場合

相続税(非課税枠あり)

契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合

贈与税

「誰が保険料を出して、誰がお金を受け取るか」によって税金の種類が変わるのが個人契約の特徴です。法人契約では、法人が受け取る死亡保険金・満期保険金・解約返戻金は、原則として法人税の課税対象(益金)となります。ただし、資産計上していた保険料積立金や配当積立金を差し引いて益金を計算します。養老保険の死亡保険金については、受取人を遺族とする契約もあります。この場合、死亡保険金は法人の益金にはならず、法人側では積み立てていた保険料積立金を雑損として損益計上する処理となります。

保険金・返戻金の種類

受取人

法人側の処理

死亡保険金 (定期・終身)

法人

益金算入 (受取額-保険料積立金等)

満期保険金・解約返戻金 (養老)

法人

益金算入 (受取額-保険料積立金等)

死亡保険金(養老)

遺族

法人税の課税対象外 (積立金を雑損として損益計上)

法人契約の税務は制度改正が行われることも多いため、実際の契約・経理処理については必ず税理士などの専門家へ確認することをおすすめします。


7. まとめ


法人が契約者となる生命保険は、個人契約とは異なり、事業保障・退職金準備・事業承継など会社経営を支える役割を担っています。また、契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって目的も税務上の取扱いも変わることが大きな特徴です。

次回は、法人契約の中でも多数の従業員を対象とする「団体保険」の仕組みを解説します。特定の役員を対象とする今回の契約とどこが違うのか、整理していきます。


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