有配当保険と無配当保険 - 配当の有無が保険料と商品に与える影響 -
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1.はじめに
生命保険の契約概要や設計書、保険証券などを見ると、「有配当」「5年ごと利差配当付」「無配当」といった記載があります。
有配当保険に加入している方のなかには、「有配当と書かれているのに、配当金を受け取った記憶がない」という方もいるかもしれません。しかし、有配当保険であっても、配当金は毎年必ず支払われるものではありません。決算の結果によってはゼロになるほか、配当金が保険会社に積み立てられていたり、まだ所定の受取時期を迎えていなかったりする場合もあります。
生命保険の配当金は、株式の配当金や預貯金の利息とは性格が異なります。保険料を計算した際の見込みと、その後の実績との差を契約者に還元する「保険料の事後精算」としての性格を持つものです。
今回は、有配当保険と無配当保険の違いに加え、「準有配当」と呼ばれることがある利差配当タイプの位置づけ、保険料との関係、商品を比較するときのポイントについて解説します。
2.生命保険の配当金とは
生命保険会社は、契約時点で将来の保険金・給付金の支払いや事業運営に必要な費用などを見積もり、主に次の3つの予定率を用いて保険料を計算します。
予定率 | 内容 |
予定死亡率 | 統計などに基づいて、将来どの程度の死亡が発生するかを見込んだ率 |
予定利率 | 保険料の一部を運用することで、将来どの程度の収益を得られるかを見込んだ率 |
予定事業費率 | 契約の締結・維持管理や保険金・給付金の支払いなどに、どの程度の経費が必要かを見込んだ率 |
実際の死亡の発生状況、運用成果、事業費が当初の見込みと一致するとは限りません。予定と実績との差から生じる損益は、それぞれ「死差」「利差」「費差」と呼ばれます。この結果として剰余が生じた場合に、契約内容や剰余への貢献度などに応じて、その一部を契約者へ分配するものが配当金です。
ただし、会社全体に利益が出れば、すべての有配当契約に一律の配当金が支払われるわけではありません。配当の有無や金額は、保険種類、契約時期、契約の経過年数、保険金額などによって異なります。
3.有配当保険には2つのタイプがある
生命保険は、配当の分配がある「有配当保険」と、配当の分配がない「無配当保険」に大きく分けられます。さらに、有配当保険は一般に「3利源配当タイプ」と「利差配当タイプ」に分けられます。
「有配当・準有配当・無配当」の3区分で説明されることもありますが、生命保険協会や生命保険文化センターの一般向け資料では、利差配当タイプも有配当保険に含めて整理されています。本記事も、この分類に沿って説明します。
3利源配当タイプ
3利源配当タイプは、予定死亡率・予定利率・予定事業費率と実績との差から生じる死差・利差・費差の損益を集計し、剰余が生じた場合に配当金を分配する仕組みです。商品によって、毎年配当する「毎年配当型」のほか、「3年ごと配当型」「5年ごと配当型」などがあります。「毎年配当型」という名称であっても、契約直後から必ず配当金を受け取れるわけではありません。一般に、通常配当の対象となるのは契約後の一定期間が経過してからであり、剰余がなければ配当金はゼロになります。
利差配当タイプ 「準有配当」と呼ばれることがある保険
利差配当タイプは、3つの予定率のうち、予定利率と実際の運用成果との差から生じる損益を一定期間ごとに通算し、剰余が生じた場合に配当金を分配する仕組みです。代表的なものに「5年ごと利差配当型」がありますが、保険会社によっては「3年ごと利差配当型」や「毎年利差配当型」なども取り扱っています。利差配当タイプは、従来「準有配当保険」と呼ばれることがあります。ただし、配当の対象を利差に限定しているだけで、配当制度のない無配当保険ではありません。有配当保険の一種として理解すると分かりやすいでしょう。
無配当保険
無配当保険は、契約者配当を分配しないことを前提とした保険です。配当による事後精算を行わない代わりに、一般に、有配当保険よりも予定率を実際の経験値に近づけて保険料を計算するため、保険料を抑えやすいという特徴があります。ただし、「無配当だから保障が少ない」「有配当だから必ず有利」という意味ではありません。配当の有無は商品の設計要素の一つであり、実際の保障内容、保険期間、解約返戻金、保険料などは商品ごとに異なります。また、終身保険なら有配当、定期保険や医療保険なら無配当と決まっているわけでもありません。配当区分は商品名だけで判断せず、契約概要、設計書、保険証券などで確認する必要があります。
4.配当金はいつ、どのように受け取るのか
配当金には、決算の結果に基づいて所定の時期に分配される「通常配当」のほか、長期間継続した契約が死亡や満期などにより消滅するときなどに分配される「特別配当」があります。通常配当の分配時期も商品によって異なります。例えば、3利源配当タイプの毎年配当型では、通常、契約後3年目の契約応当日から毎年分配されます。一方、5年ごと利差配当型では、通常、契約後6年目の契約応当日から5年ごとに分配されます。いずれも配当金が発生した場合の扱いであり、金額は保証されていません。
配当金の主な受取方法には、次の4つがあります。
保険会社に積み立てる
配当金を一時払保険料として保険を買い増す
その後の保険料と相殺する
現金で受け取る
利用できる方法は商品によって異なり、あらかじめ受取方法が決められている場合もあります。そのため、「配当金を受け取った記憶がない」という場合でも、実際には積立扱いになっている可能性があります。現在の配当状況や受取方法は、契約内容のお知らせや保険会社の契約者向けWebサービスなどで確認できます。
有配当保険と無配当保険の比較
比較項目 | 3利源配当タイプ | 利差配当タイプ | 無配当保険 |
大きな分類 | 有配当保険 | 有配当保険 | 無配当保険 |
配当の対象 | 死差・利差・費差 | 利差 | なし |
主な名称例 | 毎年配当型、3年ごと配当型など | 5年ごと利差配当型など | 無配当 |
配当金 | 剰余が生じた場合に分配 | 利差による剰余が生じた場合に分配 | なし |
配当の保証 | なし。ゼロになる場合もある | なし。ゼロになる場合もある | ― |
保険料の一般的な傾向 | 比較的高くなりやすい | 3利源配当タイプと無配当保険の中間になりやすい | 比較的抑えやすい |
※実際の配当制度、保険料、保障内容は保険会社や商品、契約時期などによって異なります。
5.配当の有無は保険料にどう影響するのか
有配当保険では、将来、予定と実績との差を配当金によって事後精算する余地を持たせています。一方、無配当保険では、一般に予定率を実際の経験値に近づけ、配当を分配しない前提で保険料を設定します。このため、保障内容や保険期間などの条件が同程度であれば、一般に無配当保険のほうが当初の保険料を抑えやすくなります。
ただし、保険料は配当区分だけで決まるわけではありません。保障範囲、保険期間、保険料払込期間、解約返戻金の水準、健康状態による保険料率など、さまざまな要素の影響を受けます。異なる会社・商品の保険料差を、すべて配当の有無によるものと考えることはできません。
また、有配当保険の設計書に将来の配当金や受取総額の試算が記載されていても、その金額は保証されたものではありません。比較するときは、配当を含まない「保証された金額」と、配当を含む「試算額」を分けて確認することが重要です。
6.「有配当保険」と「相互会社」は同じ意味ではない
生命保険会社には、株式会社と相互会社という会社形態があります。相互会社では、一定の保険契約者が会社の構成員である「社員」となり、契約者への配当は「社員配当」と呼ばれます。
ただし、「相互会社の商品はすべて有配当」「株式会社の商品はすべて無配当」という関係ではありません。株式会社も有配当保険を取り扱うことがあり、相互会社も社員とならない無配当保険などを取り扱うことがあります。会社形態と商品の配当区分は、分けて理解する必要があります。
【代理店から聞いた話】どちらを選ぶべきか
有配当保険と無配当保険は、どちらか一方が常に優れているわけではありません。必要な保障を確保したうえで、保険料負担と将来の不確実な配当をどのように評価するかによって、選択は変わります。保険代理店の担当者から伺った話では、有配当保険について「配当があるからお得」と単純に説明するのではなく、配当金は将来の決算結果によって変動し、ゼロになる場合もあることをあわせて説明するそうです。
商品を比較するときは、次の順序で確認すると分かりやすくなります。
必要な保障内容と保障期間を満たしているか
配当を含まない保証部分と保険料を比較する
有配当保険では、配当の対象となる利源と分配時期を確認する
設計書に配当金の試算がある場合は、計算の前提と非保証であることを確認する
解約返戻金や保険料払込総額など、配当以外の条件も含めて比較する
当初の保険料を抑えて必要な保障を確保したい場合には、無配当保険が選択肢になりやすいでしょう。一方、長期契約において、保険会社の将来の剰余から還元を受ける可能性も持たせたい場合には、有配当保険が選択肢になります。
ただし、配当金を前提にしなければ保険料を支払えないような契約は慎重に検討する必要があります。配当金は、預貯金の利息のようにあらかじめ確定した収益ではないためです。
8.まとめ
今回は、有配当保険と無配当保険の違いについて解説しました。有配当保険には、死差・利差・費差を対象とする3利源配当タイプと、利差を対象とする利差配当タイプがあります。「準有配当」は、一般に後者を指す呼び方です。無配当保険は配当の分配がない代わりに、一般に保険料を抑えやすい設計となっています。ただし、配当の有無だけで商品の有利・不利は決まりません。まず保障内容と保証された金額を比較し、そのうえで配当制度、保険料、解約返戻金などを確認することが重要です。また、有配当保険であっても配当金は保証されておらず、ゼロになる場合があります。設計書に記載された将来の配当金は試算であることを理解し、期待し過ぎないことも大切です。
本シリーズ「生命保険の特性」では、生命保険をさまざまな角度から整理してきました。
第1回 保障ニーズと保険の種類 ― なぜ加入するのかから保険の全体像を理解する ―
第2回 主契約と特約の関係 ― 生命保険の基本構造を理解する ―
第3回 主な主契約 ― 生命保険商品の全体像を理解する ―
第4回 主な特約 ― 生命保険商品の特約を体系的に整理する ―
第5回 投資性の強い生命保険 ― 変額保険・外貨建て保険の仕組みを理解する ―
第6回 契約者が法人となる生命保険 ― 個人契約との違いと活用目的 ―
第7回 団体保険 ― 企業が加入する生命保険の仕組み ―
第8回 払込方法とその他の契約関連事項 ― 払い方・維持の仕組みを理解する ―
第9回 生命保険会社の経営指標 ― 概要 ―
第10回 有配当保険と無配当保険 ― 配当の有無が保険料と商品に与える影響
ここまで、生命保険商品の仕組みや契約の考え方について解説してきました。
次回から始まる第4シリーズでは、生命保険の歴史や販売チャネル、法制度など、生命保険を取り巻く背景を取り上げます。商品そのものだけでなく、制度や業界全体への理解をさらに深めていきます。



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