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生命保険会社が破綻したら契約はどうなるのか

22 時間前
読了時間: 11分

生命保険は、10年、20年、場合によっては一生涯にわたる金融商品です。それだけに、「もし加入している生命保険会社が途中で破綻したら、これまで払った保険料はどうなるか」、「死亡保険金や入院給付金は受け取れなくなるか」など、不安に思うかもしれません。


結論からいうと、生命保険会社が破綻しても、その瞬間にすべての保険契約がなくなるわけではありません。日本には、契約者を保護する仕組みがあり、救済保険会社への契約移転などによって、原則として契約の継続が図られます。救済保険会社が現れない場合でも、「承継保険会社」や生命保険契約者保護機構が契約を引き受ける仕組みがあります。


ただし、ここで注意したいのが、「契約が続く」=「破綻前とまったく同じ条件で続く」ではない

という点です。今回は、生命保険会社が破綻した場合に契約者の身に何が起こるのか、4つのケースを通じて見ていきましょう。



1. 生命保険会社が破綻しても契約はすぐには消えない


日本国内で生命保険業を行う生命保険会社は、生命保険契約者保護機構に加入しています。

2026年4月1日現在、その会員数は41社です。破綻した場合、保護機構が資金援助などを行い、保険契約の継続を支えます。破綻した会社を引き継ぐ「救済保険会社」が現れた場合には、保険契約の移転、合併、株式取得などによって契約の継続が図られます。救済保険会社が現れない場合、保護機構の子会社である「承継保険会社」が契約を引き継ぐ方法や、保護機構自身が契約を引き受ける方法も用意されています。


ただし、破綻時点の責任準備金等について補償されるのは、原則として90%までです。

また、契約を将来にわたって継続するため、予定利率などの契約条件が変更され、その結果として保険金額、給付金額、年金額などが減額される可能性もあります。予定利率が一定の基準を超える「高予定利率契約」については、責任準備金等の補償率が90%を下回ることもあります。

なお、共済や少額短期保険業者などは、生命保険契約者保護機構の会員ではありません。加入している商品が保護機構の対象かどうかは、契約先の業態も含めて確認する必要があります。


2. 破綻処理は「手続」と「契約の引受先」を分けて考える


生命保険会社の破綻処理は、「どの法律上の手続で処理するのか」と「最終的に誰が契約を引き受けるのか」を分けて考えると理解しやすいです。

見方

主な方法

破綻処理の手続

保険業法に基づく行政手続、更生特例法に基づく会社更生手続

契約の引受先

救済保険会社、承継保険会社、生命保険契約者保護機構

契約を移す方法

保険契約の移転、合併、株式取得など

会社更生手続を利用する場合には、裁判所の関与のもとで更生計画を作成し、契約条件の変更やスポンサーによる再建を進めます。一方、救済保険会社が見つからない場合には、承継保険会社などが契約を引き受けることになります。つまり、「会社更生手続」と「救済保険会社への契約移転」は必ずしも対立しません。会社更生手続を進めながらスポンサーを選び、再建後の会社が契約を継続することもあります。


ここでは、仮のケーススタディで何が起こるのか、イメージしていきたいと思います。

※実際の契約は、破綻会社の財務状況、保険種類、契約時期などによって異なります。



3. ケース① 定期保険_破綻処理の途中で死亡したら?


40歳のAさんは会社員で、妻と2人の子どもがいて、死亡保険金3,000万円の10年定期保険に加入していました。6月1日に加入先の生命保険会社が破綻し、会社更生手続が開始されました。その後、更生計画が認可される前の7月15日にAさんが亡くなり、妻が7月25日に死亡保険金を請求しました。

項目

内容

保険種類

10年定期保険

死亡保険金

3,000万円

保険会社の破綻

6月1日

保険事故発生日

7月15日

保険金請求日

7月25日

更生計画

まだ認可されていない


破綻処理中だから保険金は支払われないのか?

このケースで重要なのは、保険会社が破綻した後でも、保険契約が直ちに消滅するわけではないということです。死亡などの保険事故も、会社が破綻したという理由だけで、なかったことにはなりません。会社更生手続を利用した破綻処理では、破綻保険会社と生命保険契約者保護機構との間で、補償対象保険金の支払いに関する資金援助契約が締結されることがあります。

この契約が締結されている場合、更生計画の認可決定前に発生した保険事故については、原則として従前の保険金額等の90%が支払われます。判断の基準となるのは、原則として保険金を請求した日ではなく、死亡や入院などの保険事故が発生した日です。


Aさんの契約が高予定利率契約には該当せず、資金援助契約が締結されていると、

3,000万円×90%=2,700万円 が支払われます。その後に認可された死亡保険金額が、仮に2,800万円となった場合には、すでに支払われた2,700万円との差額である100万円が追加で支払われます。一方、更生計画上の死亡保険金額が2,700万円以下だった場合には、追加の支払いはありません。


同じ「90%」でも計算対象が違う?

ここは混同しやすいところで、よく聞く「90%まで補償される」という説明は、通常、破綻時点の責任準備金等の90%を意味しています。「死亡保険金が3,000万円なら、必ず2,700万円に変更される」という意味ではありません。一方、このケースのように、会社更生手続の途中で死亡などの保険事故が発生した場合には、一定の条件のもとで、従前の保険金額等の90%を先に支払う仕組みがあります。同じ「90%」でも、何を基準に計算しているのかが違います。



4. ケース② 医療保険―引き継ぐ保険会社が見つからなかったら?

55歳のBさんは、次の終身医療保険に加入しています。

項目

内容

入院給付金

1日5,000円

手術給付金

10万円

保険会社の破綻

6月1日

契約の承継完了

9月30日

入院期間

10月10日から10日間

手術

入院中に1回

ところが、加入先が破綻し、契約を引き受けてくれる救済保険会社も見つかりませんでした。

Bさんにとっては、「55歳になってから、新しい医療保険を探さなければならないの?」

という点が心配になると思います。


救済保険会社がなくても契約を継続する仕組みがある?

救済保険会社が現れなかった場合でも、契約を継続するための仕組みがあります。その一つが、生命保険契約者保護機構の子会社として設立される「承継保険会社」です。承継保険会社は、引き継いだ契約について、保険料の受け入れ、資産運用、保険金・給付金の支払いなどを行います。保護機構自身が契約を引き受けることも可能です。このケースでは、9月30日に承継保険会社への契約承継が完了し、Bさんがその後10日間入院して手術を受けたとします。契約条件が変更されず、入院と手術がそれぞれ給付要件を満たしていると仮定すると、

  • 入院給付金:5,000円×10日=5万円

  • 手術給付金:10万円

  • 合計:15万円

を承継保険会社へ請求することになります。実際の支払額は、承継時の契約条件や約款、手術種類などで異なりますが、破綻しただけで、Bさんが直ちに新しい医療保険へ入り直す必要が生じるわけではありません。55歳になると、健康状態によっては新しい医療保険への加入が難しくなることもあります。その意味でも、既存契約を継続させること自体が契約者保護の重要な役割と言えます。なお、破綻後も契約を継続したい場合、破綻会社などから案内された方法に従って、原則として保険料を払い続ける必要があります。自己判断で支払いを止めると契約が失効する可能性があるため、案内をちゃんと確認する必要があります。



5. ケース③ 終身保険―契約が続いても1,000万円がそのまま残るとは限らない

50歳のCさんは、30歳で死亡保険金1,000万円の終身保険に加入しました。加入から20年後、保険会社が破綻し、会社更生手続が行われました。

項目

内容

保険種類

終身保険

契約時の死亡保険金

1,000万円

破綻時の年齢

50歳

更生計画上の死亡保険金

860万円と仮定

死亡時期

更生計画の認可から5年後

更生計画の認可によって契約継続はされましたが、責任準備金削減や予定利率変更を反映し、死亡保険金額が860万円に変更されたと仮定します。その5年後にCさんが亡くなった場合、遺族が受け取る死亡保険金は、変更後の契約条件に基づく860万円となります。


契約の継続と「保険金額の維持」は別?

生命保険会社が破綻すると、財務状況などに応じて責任準備金等が削減される可能性があります。さらに、契約を将来にわたって維持するため、予定利率、予定死亡率、予定事業費率など、保険料計算の基礎となる条件が変更される場合があります。その結果、将来受け取る死亡保険金や満期保険金などが減額される可能性があります。ただし、ここでの860万円は、制度上決まった式から算出した金額ではありません。「責任準備金が90%まで補償されるから、死亡保険金1,000万円が900万円になる」といった単純な関係でもないです。実際の保険金額は、破綻会社の財務状況、契約時期、保険種類、予定利率、更生計画などで個別に決まります。定期保険など保障性の高い保険は保険金額の減少幅が比較的小さい一方、終身保険、養老保険、個人年金保険など貯蓄性の高い商品は、減少幅が大きくなる傾向があります。


つまり、保険会社が破綻しても終身保険は継続できた。だから1,000万円の保障もそのまま残るとは限りません。契約を継続させる仕組みと、当初の保険金額を100%維持する仕組みは別と言えます。



6. ケース④ 養老保険_「責任準備金の90%」=「満期保険金の90%」?


45歳のDさんは、子どもの教育資金のため、20年満期の養老保険に加入しました。

死亡保険金と満期保険金はいずれも500万円です。満期まで残り5年となったところで、生命保険会社が破綻しました。

項目

内容

保険種類

養老保険

死亡・満期保険金

500万円

破綻時の責任準備金等

350万円と仮定

責任準備金等の90%

315万円

満期までの残り期間

5年

変更後の満期保険金

420万円と仮定

ここでは分かりやすくするため、高予定利率契約には該当しないものとします。

Dさんは、「責任準備金の90%が補償されるなら、500万円の90%、つまり450万円は必ず受け取れるんだよね?」と考えるかもしれません。


500万円×90%とは限らない

原則として90%まで補償されるのは、払込保険料でも、将来の満期保険金でもなく、破綻時点の責任準備金等となります。責任準備金とは、将来の保険金や給付金の支払いに備えて、保険会社が積み立てておくべきお金であり、この事例では、破綻時点の責任準備金等を350万円と仮定しているため、その90%は、350万円×90%=315万円 です。この315万円が、契約を引き継ぎ、将来の給付内容を再計算する際の基礎になります。


一方、500万円×90%=450万円 という計算は、満期保険金に90%を掛けたものであり、制度上の補償額を示す計算ではありません。さらに、責任準備金等の削減や予定利率の引き下げなどを反映した結果、変更後の満期保険金が420万円になったと仮定します。この場合、Dさんが満期まで契約を継続し、満期を迎えたときに受け取る金額は420万円です。ここで登場した3つの金額は、それぞれ意味が異なります。

金額

意味

315万円

破綻時の責任準備金等350万円の90%

450万円

満期保険金500万円に誤って90%を掛けた金額

420万円

契約条件変更後の満期保険金と仮定した金額

変更後の満期保険金420万円は、315万円に一定の数字を掛けて機械的に算出したものではありません。実際には、破綻会社の状況を反映して決まります。養老保険は貯蓄性が高いため、定期保険などと比較すると、破綻後の契約条件変更による影響を受けやすい傾向があります。

生命保険契約者保護機構も、「責任準備金等の90%」は「保険金や年金の90%」ではないと説明しています。つまり、「責任準備金の90%」とは、「払った保険料の90%が戻ってくる」でも、「約束されていた満期保険金の90%が保証される」でもないということです。


破綻を知って慌てて解約するのも要注意

生命保険会社の破綻を知れば、「お金がなくなる前に解約してしまおう」と思うかもしれませんが、過去事例では、裁判所による保全処分などを受けて、更生計画の認可までの間、解約や減額、契約者貸付、払済保険への変更などの手続きが停止されました。


一方、保険料の収納は継続された事例があります。どの手続きが、いつまで停止されるかは、破綻した会社や処理方法によって異なります。「破綻したら必ずすべての手続きが同じ期間停止される」と決まっているわけではありません。また、契約移転や更生計画の認可後に解約できるようになっても、一定期間は「早期解約控除」が設定される可能性があります。これは、破綻直後に契約者が一斉に解約して資金が流出することを防ぎ、残された契約を安定して維持するための仕組みです。慌てて自己判断するのではなく、破綻会社や生命保険契約者保護機構などから発表される案内を確認することが重要と言えます。


「契約が守られる」と「契約条件が守られる」は違う

生命保険会社が破綻しても、加入している保険がその瞬間に消えてしまうわけではありません。

救済保険会社への契約移転、合併、株式取得、承継保険会社による引受け、生命保険契約者保護機構による引受けなど、契約を継続させるための仕組みが用意されています。一方で、破綻前の契約条件が100%保証される制度ではなく、死亡保険金、満期保険金、年金額などが減少する可能性があります。


今回の4つのケースを整理すると、次のようになります。

ケース

一番伝えたいこと

ケース① 定期保険

破綻処理中に死亡しても、一定の条件のもとで保険金が支払われる仕組みがある

ケース② 医療保険

救済保険会社がなくても、承継保険会社などが契約を引き継ぐことがある

ケース③ 終身保険

契約が継続しても、当初の死亡保険金額がそのまま維持されるとは限らない

ケース④ 養老保険

責任準備金等の90%は、満期保険金の90%という意味ではない

これら違いを知っておくだけでも、保険会社が破綻した場合でも焦らずに対応できると思います。(ほとんど発生しないとも思いますが。)


※本記事の事例は、破綻制度を説明するために単純化した架空のケースです。




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