【保険業務BPR】⑤費用・効果 概算(例)
- 5 日前
- 読了時間: 6分
更新日:16 時間前

施策内容を具体化し、目指す姿を関係者と共有したら、次はそれらの施策を実行するために必要な「費用」と、施策によって得られる「効果」を概算します。経営層への説明や予算確保、施策の優先順位付けにおいて極めて重要な判断材料となります。以下に主な流れとポイントをまとめていきます。
①. 費用概算の準備(情報収集)
費用概算に向けて、必要な情報を収集します。前フェーズで整理した施策一覧をもとに、各施策で発生するコスト項目を洗い出します。主なコスト項目は以下のような感じだと思います。
◆初期費用(イニシャルコスト)
・ソリューション導入費用(ライセンス購入費・初期設定費)
・システム開発/カスタマイズ費用
・業務プロセス設計費用(コンサルティング費 等)
・プロジェクト管理費用(PMO費 等)
・インフラ整備費用(サーバー・ネットワーク・端末 等)
◆維持・運用費用(ランニングコスト)
・ソリューション利用料(月額・年額ライセンス費)
・保守・サポート費用(ベンダー保守・ヘルプデスク 等)
・システム保守・運用費用(ベンダー保守・ヘルプデスク 等)
・業務委託費用(オペレーター人件費・外注費 等)
各施策ごとに、上記のコスト項目のどれが発生するかを整理し、費用を見積る項目を明確にします。この段階では費用はざっくり(概算レベル)でよいですが、後から大きな乖離が出ないように一定の精度は確保しつつ、経営層を中心とする関係者に説明できるように算出のロジックはきちんと整理しておきます。
②. ベンダーへのヒアリング・見積取得
費用概算の精度を高めるため、必要に応じてソリューションベンダーにヒアリングを行い、見積情報を取得します。SaaS等の外部ソリューションは、Web上に料金体系が掲載されているケースもありますが、保険会社はユーザー数が多くボリュームディスカウントできる可能性があるので、キーとなるソリューションはベンダーにアクセスし、より詳細な費用感を確認します。
活用の目的/対象業務/想定規模(ユーザー数・処理件数等)/必要な機能要件/カスタマイズの範囲/導入スケジュール等を提示できる範囲で伝えます。また、標準機能(追加開発が必要な範囲)/導入実績と費用感(類似案件の参考情報)/保守・サポート体制と費用/価格交渉の余地(ボリュームディスカウント・複数年契約割引等)も可能な範囲で確認します。
ただ、ベンダーも忙しく、変な期待を抱かせるのは避けます。この段階は正式な見積依頼(RFP)ではないため、概算見積(ROM: Rough Order of Magnitude)として扱います。正式な見積取得は、実行フェーズでの要件定義後に行うケースが一般的です。
それから、ソリューション費用だけでなく、社内で発生する内製コストも算出します。内製コストは見落とされがちですが、プロジェクトの総コストを正確に把握するためには重要です。
③. 費用概算の取りまとめ
収集した情報をもとに、施策ごとの費用概算を取りまとめます。費用概算は、初期費用と初期費用に分けて整理し、3~5年間の総コスト(TCO: Total Cost of Ownership)を算出します。下記は、ITリューション導入を含む費用概算の例です。

実際は、Excelで細かいコスト項目を整理して計算式を組んでいきますが、大きな要素としては、各施策ごと、種別(初期/維持・運用)ごとに、費用算出の計算式を明示して、計算式の各パラメータに収集した費用情報を入れて計算していきます。そうすることで、費用概算の考え方をきちんと説明することができ、ベンダーの見積りが後で変わった場合でも調整することができます。そして、施策を実行する年度も踏まえて、いつ・いくら費用が発生するかも可視化していきます。

費用が整理できたら、これから算出する効果と比較して、施策の優先順位付けの判断材料とするため、各施策ごと(+年度ごと)に集計します。
④. 効果概算の設計(効果の定義)
次に、各施策によって得られる効果を概算します。効果概算の前提として、どのような効果を測定するのかを定義します。BPRにおける効果は、ほとんどのケースで「定量効果」と「定性効果」に分類されます。
◆定量効果(数値で測定可能な効果)
・業務工数削減(年間○○時間削減、○○人月削減 等)
・人件費削減(削減工数×人件費単価 等)
・外注費削減(○○業務の内製化による削減 等)
・システム運用コスト削減(既存システムの廃止・統合 等)
・処理時間短縮(○○業務の処理時間○○%削減 等)
・エラー率削減(○○%削減による手戻り工数削減 等)
・売上向上(新規案件増・成約率増・解約率低減 等)
◆定性効果(数値化が難しいが重要な効果)
・顧客満足度向上(NPS向上、クレーム削減 等)
・従業員満足度向上(業務負荷軽減、働き方改革 等)
・業務品質向上(エラー削減、コンプライアンス強化 等)
・リスク軽減(情報漏えい防止、事故対応遅延防止 等)
・競争力強化(市場対応スピード向上、新商品開発力向上 等)
・ナレッジ蓄積(業務の見える化、ノウハウの体系化 等)
具体的な定量効果の算出は、現状値(ベースライン)と施策が実現した際の目標値の差分を計算し、金額換算します。例えば、削減・自動化される業務プロセスの定量効果については、現状の処理件数 × 作業時間/1件 × 単価/時間で金額に換算して数値が効果としてカウントされます。業務工数削減のケースで、1件あたりの作業時間が10分⇒5分に短縮される場合は、5分 × 処理件数 × 単価/時間で計算した数値が効果としてカウントします。最終的には、施策ごとに年間でどのくらい効果を生むかをExcel等で計算して、パワーポイント等に見やすくアウトプットします。


定性効果は数値化が難しいため、他社事例等を参考に整理して、定量効果を補強する根拠として提示するケースがありますが、この辺はプロジェクト状況に応じて調整します。
⑤. 費用対効果 概算 費用概算と効果概算を統合し、費用対効果を可視化します。下記の例は、単純に施策を実現する費用と効果を施策ごと・年度ごとに比較して、整理したものです。

各施策単位の分析指標として、ROI(投資利益率)と投資回収期間を活用するケースもあります。投資回収期間が短いほど、早期に投資を回収できるため、リスクが低い施策と評価されます。一般的には、5年または3年以内に回収できる施策が望ましいとされます。どのように費用対効果を算出するかは、クライアントの慣行も踏まえて実施します。
⑥. 施策の優先順位付け(再評価)
費用対効果を踏まえて、施策の優先順位を再評価します。前フェーズでは「インパクト」と「実現難易度」で優先順位を付けましたが、このフェーズでは「費用対効果」等を踏まえて、どの施策から実行するか判断します。保険会社では、すべてを定量的な指標で判断するかというとそうではなく、会社のブランドや顧客満足等で定性的に評価するケースもあります。
下記は、施策の評価軸の例です。

費用対効果に加えて、他の指標も評価軸になり得ることを補足します。各施策を評価する際の観点と基準を整理し、カウントして合計の点数で評価するとか、重み付けして評価する等もプロジェクトに応じて調整します。

優先順位付けの評価軸に沿って各施策を評価したら、関係者に説明し、施策の優先順位と実施方針について合意を得ます。施策の優先順位も決定したら、次フェーズの「実行計画」策定に向けた準備を行います。具体的には、優先度が高い施策から詳細な実行計画(ロードマップ・スケジュール・体制)を検討していきます。



コメント