少額短期保険事業(損害保険との違い)
- 俊輔 藤﨑
- 6月19日
- 読了時間: 3分

保険業のうち、一定の事業規模の範囲内において、保険金額が少額、保険期間1年(第二分野については2年)以内の保険で保障性商品の引受のみを行う事業として、「少額短期保険業」が設けられています。2025年時点で、120社以上が登録されており、ペット保険やレジャー保険等、低廉な保険料でリスクの隙間を埋める保険商品が市場で一定の支持を受けています。
少額短期保険業では、保険の区分に応じて1被保険者について引受ける保険金額の上限が設けられています。下記1~6の保険の保険金額の合計額は1,000万円が上限となります。
1. 死亡保険:300万円以下
2. 医険保険:80万円以下
3. 疾病等を原因とする重度障害保険:300万円以下
4. 傷害を原因とする特定重度障害保険:600万円以下
5. 傷害死亡保険:300万円以下
6. 損害保険:1,000万円、低発生率保険:1,000万円以下
7. 低発生率保険(賠償保険 等):1,000万円以下
上記の他に、参入要件、最低資本金、事業規模、資産運用、契約者保護の仕組み等いくつかの観点で損害保険会社と明確に異なる特徴を持っています。また、少額短期保険業は掛け捨て型の保険のみで、解約返戻金や満期保険金がないため、貯蓄や資産形成を目的とした保険加入には適してません。
一方で、商品審査に求められる書類(事業方法書・普通保険約款・算出方法書)、責任準備金の考え方、情報開示の要件、募集規制やクーリングオフ制度等、損害保険業界と同様の特徴を持っている領域も多数存在します。

少額短期保険業者が提供する商品は、大まかに分類すると、“住宅・家財系”、“死亡・葬儀系”、“医療・入院系”、“ペット系”、“日常リスク・レジャー系”、“特定ニッチ・ユニーク系”に整理することができます。市場全体では、“住宅・家財系”が半分以上(約70%)を占め、“ペット”がその次を占めます。
保険期間が短く保険金額も少額のため、保険料が安いのが特徴の1つです。また、保険でカバーする内容も損害保険会社にはない、単身世帯・シニア層等の従来の標準家庭像に合わない、時代を捉えたニッチなものが多いのも特徴です。自転車事故・ペット医療・いじめ対策・弁護士費用補償等、通常の損害保険ではカバーできなかった生活リスクに対応する商品や、スマホ故障・ドローン事故・副業トラブル等の新しいリスクに対応する商品も開発されています。
代理店での加入を中心とする損害保険とは異なり、Webでの申込・契約が主流で、証券発行や保険金請求もアプリやメールで完了することも評価されています。また、若い世代だけでなく、高額な生命保険や医療保険に加入しにくい高齢者への就活への備え等、シニア層への一定の支持を得ています。
近年、新規参入が相次いでおり、120社以上が事業を行っています。SBIグループ・全管協グループ・東京海上グループが売り上げの上位を占めてますが、光通信グループや大手保険会社の参入もあり、競争が激化しています。幅広いリスクに対応した商品を提供する会社が存在する一方で、特定のリスクに限定した商品を対応する会社も多数存在します。



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