損害保険の販売チャネル
- 俊輔 藤﨑
- 6 日前
- 読了時間: 4分

損害保険業界の販売チャネルは、代理店扱い、直扱い、保険仲立人扱いの3つに分類されます。代理店扱いが約90%を占めます。近年では販売手法が多様化していますが、3つのチャネルの割合はそれほど変わりません。
◇代理店扱い
損害保険代理店を通じて行われる募集形態です。損害保険代理店は、損害保険会社との損害保険代理店委託契約に基づいて、損害保険会社に代わって、保険を募集します
◇直扱い
損害保険会社の役職員が直接保険を募集する形態です。新聞、テレビ等の広告やインターネットを活用して損害保険会社が直接保険募集を行う通信販売なども直扱に含まれます
◇仲立人扱い
保険仲立人(保険ブローカー)を通じて行われる募集形態です。保険仲立人は、損害保険会社から委託を受けることなく、契約者と保険会社の間に立って、契約締結の媒介を行います


損害保険業界の販売チャネルのうち、主流となっているのが「代理店チャネル」で、これは保険会社と委託契約を結んだ代理店が顧客に保険を販売する形です。代理店には、複数の保険会社の商品を扱う「乗合代理店」と、1社のみを扱う「専属代理店」があります。乗合代理店では商品比較がしやすく、顧客のニーズに応じた提案が可能です。損害保険代理店はほとんどが本業を他に持ち、訳半数を占める自動車ディーラーの他、住宅販売会社、旅行代理店等が保険を扱うケースもあり、これを「副業(関連業種)代理店」と呼びます。専門性と親和性の高い場面で自然な形で保険を提案できるのが特徴です。一方、「直販チャネル」は保険会社が直接顧客に販売する形態で、代表的なものに「通販型(ダイレクト型)保険」があります。テレビCMやインターネット広告を通じて集客し、Webや電話で申し込む形式です。中間コストが少ないため保険料が割安になる傾向があり、特に自動車保険や火災保険など比較的シンプルな商品で普及しています。近年はAIチャットやスマホアプリを活用したオンライン完結型の販売も増加しています。
近年は営業効率化の観点から代理店の統廃合が進んでおり、代理店数はピークである1996年の62万店から大幅に減少傾向にあります。
代理店の役割は、主に下記となります。
◇契約前
・保険商品の勧誘
・保険の対象となるものの確認
・保険商品の説明(契約金額の設定、保険料の計算)
・重要事項の説明、告知事項の受領
・契約の意向確認
・保険契約の締結(保険料の領収、領収証の発行・交付)
◇契約後
・保険契約の変更や解約などの申出の受付
・事故通知の受付、保険会社への連絡保険料の領収
・保険金請求手続きのアドバイス

保険中立人(保険ブローカー)とは、保険契約者(個人や企業)の立場に立って最適な保険商品を提案・仲介する専門家であり、保険会社ではなく、契約者側に属する立場で活動するのが特徴です。顧客のために誠実に保険契約の締結の媒介にあたり、保険業法上の登録制度が設けられています。通常の保険代理店は保険会社の委託を受けて保険商品を販売するのに対し、保険ブローカーはどの保険会社にも属さない中立的な立場から、複数の保険会社の商品を比較・分析し、契約者にとって最も適した保険の組成や手続きを支援します。特に企業向けのリスク管理において、複雑かつ大規模な保険契約(例:建設工事、サイバーリスク、グローバル事業など)の設計・交渉・更新において専門性を発揮します。保険ブローカーは、顧客のリスク状況を分析したうえで、必要な補償内容や保険金額、条件などを設計し、保険会社と交渉します。また、事故発生時のサポートや保険金請求の手続きも契約者に代わって行うことが多く、「保険のコンサルタント」としての役割も担っています。日本では保険ブローカーの数は欧米に比べて少ないものの(募集に占める割合は1%以下)、大手企業やグローバル企業ではブローカーの活用が進んでおり、近年は中堅企業への支援や再保険分野でのニーズも高まっています。中立的な立場で顧客の利益を最大化する存在として、今後その役割がさらに注目されています。
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