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損害保険会社が保持しているデータ

  • 21 時間前
  • 読了時間: 9分
損害保険会社が保持しているデータ概要
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損害保険会社が保持しているデータ概要
損害保険会社が保持しているデータ概要

損害保険会社は、損害保険事業を行う過程で大量のデータを収集・蓄積します。データは整理の仕方によって異なりますが、大まかに下記のように分類することができると考えます。


① 営業・マーケティングデータ ・代理店情報 (拠点・募集人・挙績・手数料率・募集品質・コンプライアンス状況 等) ・ダイレクトチャネル行動ログ (Web閲覧・見積取得・申込状況 等)

・マーケティング施策結果 (DM・メール閲覧・キャンペーン反応 等) ・営業店情報 (担当代理店・営業担当者・訪問/提案・挙績・予算・代理店支援履歴 等) ・リスク分析 (損害率・事業費率・コンバインドレシオ等の収益管理データ) ・コンタクト履歴 (コールセンター対応履歴・苦情・満足度調査 等)

② 顧客データ ・顧客属性 (氏名・住所・性別・生年月日・職業・家族構成・連絡先 等) ・保有資産情報 (自動車・不動産・家財・事業内容・設備 等)

③ 契約データ ・加入商品 (自動車保険・火災保険・傷害保険・賠償責任保険 等) ・契約条件 (補償内容・保険金額・被保険利益・免責事項 等) ・リスク評価情報 (車両情報・使用目的・走行距離・事故履歴・住宅情報・所在地・建物構造・用途・事業リスク 等) ・引受査定情報 (査定判定・特別料率・特別条件 等)

④ 契約管理データ ・基本情報変更 (氏名・住所・支払方法の変更 等) ・補償内容変更 (補償内容・保険金額・特約の追加/削除 等) ・保険料収納 (収納履歴・未収状況 等) ・更改・解約情報 (中途更改・満期更改(継続)・失効/解約)


⑤ 事故・支払データ ・事故受付 (請求者・事故発生日時・場所・事故状況・相手方情報 等) ・損害調査 (現地調査結果・写真・修理見積・医療情報・過失割合 等) ・支払査定 (審査内容・判定結果・査定担当者 等) ・支払結果 (支払日・金額・支払方法・支払先 等) ・示談・交渉履歴 (相手方との交渉経緯・示談内容 等) ・不正請求関連 (不審フラグ・調査結果・対応履歴・修理工場・医療機関 等)

⑥ コーポレートデータ ・収入保険料  ・財務・会計 (収入保険料・支払保険金・代理店手数料・資産・負債・決算情報 等) ・法務・コンプライアンス (AML(マネロン)記録、苦情・クレーム情報・内部監査、外部監査・処分歴 等)

・人事 (属性・勤務状況・採用・給与・評価・研修履歴・資格 等)

・情報システム(アクセスログ・セキュリティログ・パフォーマンス・可動状況・障害履歴 等)

・リスク管理(保険リスク(責任準備金・異常災害準備金・再保険 等)、市場・信用・オペレーショナルリスク・モニタリング結果 等)


外部データ活用ケース(案)
外部データ活用ケース(案)

これらのデータは、損害保険事業を運営するために日々蓄積されていますが、①データが複数の基幹システムに分散しており横断的な活用が難しい、②紙・非構造化データ(事故現場写真・修理見積書・診断書 等)として保管されており分析に手間がかかる、③個人情報・事故情報を扱うための厳格な法令対応(個人情報保護法・保険業法等)が必要という課題があり、有機的に連携・活用できていないケースが多いのが実態です。


近年では、自社が保有するデータに加えて外部データを組み合わせることで、リスク評価の精緻化、新たな保険商品の開発、保険以外のサービス開発を検討・推進するケースが増えてきています。


◆ 損害保険会社のデータ収集・蓄積の仕組み

損害保険会社は、事業を運営する商流(各プロセス)でデータを収集しています。

募集・引受プロセスでの収集 代理店や営業担当者を通じて、顧客の属性・保有資産・リスク情報を申込書や被保険物の添付書類から収集します。自動車保険では車両情報(車種・年式・用途・走行距離 等)、火災保険では物件情報(所在地・建物構造・築年数・用途 等)といった物件固有のリスク情報が引受査定の基礎データとなります。近年はタブレット端末での電子申込やWeb申込が普及し、デジタルデータとしての蓄積が加速しています。ダイレクト保険では、顧客が自ら入力した見積・申込情報がリアルタイムに収集・蓄積されます。

契約管理プロセスでの収集

契約後の住所変更・車両入替・補償内容変更等の手続きを通じて、顧客の生活環境や保有資産の変化を反映したデータが随時収集されます。また、満期更改・中途解約・失効の履歴は、顧客の継続意向やリスクの変化を把握する上で重要なデータとなります。コールセンターへの問合せ内容や応対履歴も、顧客のニーズや不満を把握するデータとして蓄積されます。


事故・損害調査プロセスでの収集

事故受付から支払いに至るプロセスでは、事故の状況・損害の内容・修理費用・医療費等の詳細な事故情報が収集されます。損害調査員(アジャスター)による現地調査の結果、修理見積書、医療機関からの診断書等は、損害保険会社が保有する最も重要なリスクデータの一つです。これらの事故データは、引受査定の精度向上や商品設計・保険料率算定のベースとなります。また、事故写真や動画等の非構造化データも蓄積されており、AI活用によるデータ価値の向上が期待されています。


テレマティクス・IoTデバイスでの収集

近年の自動車保険では、車載デバイスやスマートフォンのGPS・センサー機能を活用したテレマティクス保険が普及しつつあり、走行距離・走行時間帯・急加速・急ブレーキ等の運転行動データをリアルタイムに収集・蓄積することが可能になっています。また、スマートホームデバイスと連携した火災・水漏れのセンサーデータ等、IoTを活用したリスクモニタリングデータの収集も始まっています。


◆ 活用が進んでいないデータと、今後の活用に向けた動き

引受査定・リスク評価の高度化 従来の引受査定は、申込書に記載された情報をもとに引受規定に沿って画一的に判断するケースが多かったですが、過去の事故データや外部の統計データ(気象・地理情報・交通事故統計等)をAI・機械学習で分析することで、より精度の高いリスク評価を実現しようとする動きが進んでいます。例えば、自動車保険では運転者の属性・車種・使用目的・過去の事故履歴を組み合わせた精緻な保険料算定、火災保険では物件の所在地・建物構造・自然災害リスクマップを組み合わせたリスク評価が可能になります。

テレマティクスデータを活用した料率設定

走行距離・運転行動データをもとに、実際の運転リスクに応じた保険料を算定する「テレマティクス保険(UBI: Usage-Based Insurance)」の普及が進んでいます。安全運転をしている契約者ほど保険料が下がる仕組みは、優良ドライバーの獲得・維持に効果的であり、事故リスクの高い契約者との逆選択を防ぐ効果も期待できます。

事故・損害データを活用した査定効率化

事故現場の写真・動画をAI画像認識で解析し、損害額を自動で概算する取り組みが進んでいます。例えば、車両の損傷写真をスマートフォンで撮影してアップロードするだけで、修理費の概算を即座に算出する仕組みが一部で実用化されています。これにより、損害調査員の現地調査が不要になる軽微な案件を増やし、査定業務の効率化と顧客への迅速な支払いが可能になります。


解約・失効予測と継続率向上

契約管理データ・顧客接触履歴・保険料収納状況等を分析することで、満期解約・中途解約のリスクが高い契約者を事前に予測し、代理店や営業担当者によるフォロー施策を打つ取り組みが広がっています。例えば、「前回更改時に補償を削減し、かつコールセンターへの問合せが増加している契約者」等の行動パターンを特定し、継続を促すアクションを自動的に提案する仕組みを構築します。


次の提案・クロスセルへの活用

顧客の契約内容・ライフイベント(転居・子どもの誕生・自動車の買い替え 等)・契約管理履歴をもとに、補償ギャップ(不足している保障)を分析し、最適な追加提案を代理店や営業担当者、アプリを通じて提示する取り組みが検討されています。例えば、火災保険の契約者に家財保険や個人賠償責任保険のセット提案を自動生成してアラートを出す、自動車保険の更改タイミングに特約追加を提案する等が、事前に設定したプランに応じて画一的に行うのではなく、契約者ごとにタイミングを捉えた提案が可能になります。


不正請求検知の高度化

過去の不正請求データをもとに不審な請求パターンをAIに学習させ、不正請求の早期検知に活用するケースが増えています。例えば、「同一修理工場への請求が短期間に集中している」「事故状況と損傷箇所が矛盾している」等のパターンを自動検知し、調査担当者へのアラートを発生させることで、不正請求による損害を未然に防ぐ取り組みが進んでいます。不正データは件数が限定されるため、複数の保険会社のデータを使って、精度を上げるソリューションも登場しています。


防災・リスクコンサルティングへの活用 自然災害データ(気象・地震・洪水ハザードマップ 等)と自社の契約データを組み合わせることで、特定地域・建物における損害リスクを事前に把握し、契約者に対して防災・減災アドバイスを提供する取り組みが広がっています。例えば、台風・豪雨の発生が予測された際に、集積リスクの高い地域の契約者へ事前連絡・備え方のアドバイスを自動で送付する、法人顧客に対して工場・倉庫の自然災害リスク診断レポートを提供する等、「支払う保険会社」から「リスクを予防する会社」へのシフトに向けたサービス開発が進んでいます。

データ基盤の整備(データドリブン経営) 上記のようなデータ活用を実現するための基盤として、各社は「データウェアハウス(DWH)」や「データレイク」の整備に取り組んでいます。複数の基幹システムに分散していたデータを一元管理・連携させることで、横断的な分析が可能になります。加えて、データの品質管理(重複・誤記・欠損の排除)やデータガバナンス(誰が何のデータをどう使えるかのルール整備)も重要な課題となっています。

以上、損害保険会社が保持しているデータについて解説させていただきました。この図で示したケースは検討の一例ですが、今後データを活用した新たな事業立ち上げはより一層期待されていくと思います。


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