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火災保険・地震保険

2025年7月21日
読了時間: 8分

火災保険は、自動車保険と並んで日本で最もなじみのある損害保険のひとつです。住宅ローンを組む際には加入が事実上必須となっており、持ち家を持つ多くの方が何らかの形で加入しています。一方、地震保険は火災保険とセットでのみ加入できる特殊な保険で、政府と民間保険会社が共同で運営する公共性の高い制度です。




1. 火災保険とは


火災保険とは、建物や家財が火災・自然災害・日常のさまざまな事故によって受ける損害を補償する保険です。

「火災保険」という名前から「火事のときだけ使える保険」と思われがちですが、実際には火災以外にも台風・大雨・雪・盗難・水漏れなど、住まいに関する幅広いリスクをカバーする保険です。むしろ近年は自然災害による支払いが火災による支払いを大きく上回っており、「住まいの総合保険」と捉えるのが実態に近いです。


2. 主な補償内容


火災保険の補償は大きく「火災・爆発系」「自然災害系」「日常リスク系」の3つに分けられます。


① 火災・爆発系

補償項目

内容

火災

建物・家財の火災による損害

落雷

落雷による建物・家財の損害(家電の故障なども対象)

爆発・破裂

ガス爆発など

② 自然災害系

補償項目

内容

風災・雹(ひょう)災・雪災

台風・強風による屋根の損傷、雹による破損、雪の重みによる損壊など

水災

洪水・土砂崩れ・高潮による損害(床上浸水など)

③ 日常リスク系

補償項目

内容

水濡れ

給排水設備の事故、上階からの水漏れによる損害

盗難

建物の損傷・家財の盗難・汚損

外部からの物体の落下・衝突

車が建物に突っ込んだ、飛来物による破損など

補償の範囲は保険商品・プランによって異なります。水災を外して保険料を抑えるプランも一般的ですが、近年の気候変動による洪水・土砂災害の増加を踏まえると、水災補償の重要性は高まっています。


3. 保険金が支払われる主なケース

ケース

内容

火災・もらい火

自宅が火事で焼けた(原因が隣家でも補償される)

台風による屋根の損傷

強風で屋根材が飛んだ・雨漏りが生じた

床上浸水

大雨・洪水で床上まで浸水し家財が損害を受けた

落雷によるテレビ・エアコンの故障

落雷のサージ電流で家電が壊れた

上階からの水漏れ

マンションの上階の給水管破裂で自室が水浸しになった

盗難

窓ガラスを割って侵入され家財が盗まれた


4. 保険金が支払われない主なケース

免責事由

内容

地震・噴火・津波

火災保険単体では対象外(別途地震保険が必要)

故意・重大な過失

意図的に火災を起こした場合など

経年劣化・自然消耗

老朽化による屋根の腐食・外壁のひび割れなど

戦争・内乱

戦争・テロ行為による損害

水災対象外プランでの水害

水災補償を外したプランで床上浸水が発生した場合


5. 失火責任法:もらい火でも請求できない


日本には「失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法)」という特別な法律があり、隣家の火事で自宅が燃えても、原則として隣家に損害賠償を請求することができません。


通常の民法では、他人に損害を与えた場合は賠償責任が発生します。しかし失火(火事)については例外があります。日本は木造家屋が多く火が燃え広がりやすいため、「少しの不注意で火事を起こしてしまった人に全額の賠償責任を負わせると、賠償しきれない額になりかねない」という考え方から、軽過失(ちょっとしたうっかり)による失火の場合は賠償責任を免除する法律が明治時代から存在しています。


これが「火災保険は自分で自分の家を守るために入る」理由の一つです。隣の家が燃えてもらい火で自宅が全焼しても、隣家に請求できないケースがほとんどです。自分の財産は自分の火災保険で守る必要があります。なお、重大な過失(天ぷら油の火を消さずに外出するなど)による場合は賠償責任が生じます。


6. 再調達価額(新価)での契約が基本


火災保険の保険金額は、原則として「再調達価額(新価)」をベースに設定します。

「時価」とは、現在の中古市場での価値のことです。例えば築30年の木造住宅の時価は、建てたときの価格より大幅に低くなっています。時価で保険金額を設定すると、全焼した場合に同じ建物を建て直せるだけの保険金が受け取れない可能性があります。


一方で、「再調達価額(新価)」とは、同じ建物を今の建築費で建て直すのにかかる費用のことです。一般的な住宅の火災保険は、再調達価額をベースに保険金額を設定する「価額協定保険特約」を付帯することで、実際に建て直せる金額の保険金が支払われる仕組みになっています。


以前は時価基準の契約も多くありましたが、現在の家計向け火災保険は再調達価額(新価)が標準的な設定です。ただし、建築費の上昇が続く昨今、数年前に設定した保険金額が現在の建築費に対して不足している(一部保険になっている)ケースもあります。定期的な見直しが重要です。


7. 明記物件:高額家財は証券への記載が必要


家財保険に加入する場合、1点30万円を超える貴金属・宝玉・宝石・書画・骨董・美術品・稿本(原稿)などは「明記物件」として保険証券に記載しなければ補償されません。

例えば、100万円のダイヤモンドの指輪や50万円の絵画を家財保険に含めたい場合、申込時に「明記物件」として届け出て、保険証券に記載してもらう必要があります。記載がない場合、仮に盗難・火災で失っても補償の対象外になります。高額な貴金属・美術品をお持ちの方は、契約時に必ず確認することが重要です。



8. 地震保険:火災保険とセットで加入する任意の保険


地震保険は、地震・噴火・津波による損害を補償する保険です。火災保険単体では、これらの損害は一切補償されません。


なぜ火災保険で地震が補償されないのか

地震リスクは、通常の火災・自然災害と比べて桁違いに巨大です。関東大震災・阪神淡路大震災・東日本大震災のような大規模地震が発生した場合、民間の保険会社だけでは支払いが到底追いつきません。そのため、地震保険は政府と民間保険会社が共同で運営する仕組みになっており、「地震保険に関する法律」に基づいて制度が設計されています。


地震保険の主な内容

項目

内容

補償対象

居住用建物・家財(企業向け財物は対象外)

付帯方法

火災保険とセットのみ(単独加入は不可)

保険金額の範囲

火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内

上限

建物5,000万円・家財1,000万円

損害認定区分

全損・大半損・小半損・一部損の4区分

地震保険は「任意付帯」だが、不加入には署名が必要

地震保険への加入は任意です。しかし、加入しない場合は火災保険の申込書に「地震保険に加入しない」旨の署名が必要です。通常、任意の保険は「加入したければ申し込む」だけです。しかし地震保険は逆で、「加入しない場合に署名する」仕組みになっています。これは地震保険の普及率を高めるための工夫で、「署名するという手間」を設けることで、加入するかどうかを契約者に意識的に考えてもらう仕掛けです。


東日本大震災以降、地震保険の重要性に対する認識は高まっていますが、2024年時点の付帯率は約70%程度です。地震大国・日本において、地震保険は「念のため」ではなく「基本の備え」として位置づけることが重要です。


9. 保険料率の算出の考え方


火災保険の保険料は、以下の3つの主要因子をもとに算出されます。損害保険料率算出機構(GIRO)が算出した参考純率をベースに、各保険会社が独自の付加保険料を加えて最終的な保険料を設定します。


① 物件の種別

物件種別

内容

住宅物件

個人が居住するための建物・家財(戸建・マンション)

一般物件

店舗・事務所・倉庫など住宅以外の用途の建物

工場物件

製造工場など特殊な用途の建物

倉庫物件

物品を保管する専用倉庫

用途によってリスクが大きく異なるため、物件種別ごとに料率体系が異なります。


② 建物の構造

建物の構造は、火災・風災などに対する強さを左右するため、料率に直接反映されます。住宅物件では主に以下の3区分で管理されます。

構造区分

対象

特徴

M構造(マンション構造)

共同住宅(コンクリート)

最も燃えにくく、保険料が最も安い

T構造(耐火構造)

耐火・準耐火構造の戸建

中程度の保険料

H構造(非耐火構造)

木造・軽量鉄骨など

最も燃えやすく、保険料が最も高い

同じ30坪の住宅でも、木造(H構造)とRC造マンション(M構造)では保険料が数倍変わることもあります。


③ 建物の所在地

台風・水災・雪のリスクは地域によって大きく異なるため、都道府県ごとに料率が設定されています。例えば台風の多い沖縄・九州は風災リスクが高く、豪雪地帯の東北・北陸は雪災リスクが高いため、それぞれの地域特性が保険料に反映されます。


まとめ

項目

火災保険

地震保険

補償対象

火災・風災・水災・盗難など幅広く

地震・噴火・津波

加入方法

単独加入可

火災保険とセットのみ

保険金額

再調達価額(新価)が基本

火災保険の30〜50%の範囲

運営

民間保険会社

政府+民間の共同運営

保険料の決まり方

物件種別・構造・所在地などで決定

建物の構造・所在地で決定

注意点

地震は対象外・明記物件は要届出

不加入には署名が必要

火災保険は「火事だけの保険」ではなく、住まいを取り巻くあらゆるリスクへの備えです。自然災害の甚大化・建築費の上昇が続く中、保険金額の定期的な見直しと、地震保険とのセット加入が、住まいのリスク管理の基本となっています。


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