経営指標 - 収益性・効率性 -
- 2025年5月19日
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更新日:5月18日

はじめに
損害保険会社の収益性・効率性を測る指標として、「正味損害率」「正味事業費率」「コンバインド・レシオ」の3つが広く使われています。これらはいずれも「受け取った保険料に対して、何にどのくらい使ったか」を示す割合指標です。
1. 収益性・効率性の3指標
◇ 正味損害率
計算方法
正味支払保険金に損害調査費(損害調査業務・保険金支払業務に付随する人件費・物件費・税金等)を加えた金額を、正味収入保険料で除した割合です。保険会社の"保険引受成績"を示す指標で、「公表損害率」あるいは単に「損害率」とも呼ばれます。 正味損害率 =(正味支払保険金 + 損害調査費)÷ 正味収入保険料
指標が意味すること
この数値が高いほど、収入保険料に対して保険金の支払いが多かったことを意味します。台風・地震などの大規模災害が発生した年は、この数値が急上昇します。
居酒屋で言うと:「売上に対する食材費+廃棄ロスの割合(原価率)」。食材を無駄にしたり仕入れコストが上がると、この数値が悪化します。
◇ 正味事業費率
計算方法
保険の募集・販売に係る営業部門・一般管理部門の経費に、代理店手数料・仲立人手数料・募集費・集金費・受再保険手数料を加え、出再保険手数料を差し引いた金額を、正味収入保険料で除した割合です。保険会社の"経営効率"を示す指標で、単に「事業費率」とも呼ばれます。
正味事業費率 = 事業費(諸手数料+集金費+保険引受に係る営業費・一般管理費)÷ 正味収入保険料
指標が意味すること
この数値が低いほど、効率的に保険を販売・運営できていることを示します。代理店依存度が高い会社ほど、手数料コストが膨らみやすい傾向があります。
居酒屋で言うと:「売上に対する人件費・家賃・広告費の割合(経費率)」。スタッフが多すぎたり、立地の家賃が高すぎたりすると、この数値が悪化します。
◇ コンバインド・レシオ(Combined Ratio)
計算方法
正味損害率と正味事業費率を足し合わせた指標です。保険会社のリアルな収益性を測る指標として利用されます。
コンバインド・レシオ = 正味損害率 + 正味事業費率
指標が意味すること
損保会社の収益性を測る最も代表的な指標です。100%を下回れば保険引受で黒字、100%を超えれば保険引受損失が発生していることを意味します。ただし、コンバインド・レシオが100%を超えていても、資産運用収益(利差益)でカバーして最終的に黒字になるケースもあります。あくまで「保険本業の収益性」を測る指標です。
居酒屋で言うと:「原価率+経費率の合計」。この合計が100%を超えると、料理を作って提供するだけで赤字ということになります。デリバリーの副収入(運用益)で補えていても、本業の厨房は赤字という状態です。
指標 | 計算式 | 意味 |
正味損害率 | (保険金+損害調査費)÷ 保険料 | 保険引受成績 |
正味事業費率 | 事業費 ÷ 保険料 | 経営効率 |
コンバインド・レシオ | 損害率 + 事業費率 | 保険本業の収益性 100%超で引受損失 |

2. 損害率の3つの計算方式
損害率は「何を分子・分母に置くか」によって算出方法が異なります。代表的な3つの方式を整理します。
◇ リトン・ペイド・ベイシス損害率(Written Paid Basis Loss Ratio)
計算方法
分子 : 期間中に実際に支払われた保険金
分母 : 会計上その期間に計上された収入保険料(いつ契約されたかは問わない)
指標が意味すること
"支払ベースの損害率"を示します。最もシンプルに計算できる方式ですが、分母(保険料)と分子(保険金)の期間が必ずしも一致しないため、実態把握が難しいケースがあります。営業現場である集団の傾向をざっくり把握する際によく使われます。
居酒屋で言うと:「今月支払った食材費 ÷ 今月の売上」。先月仕入れた食材を今月使っていても、今月の費用として計上するイメージ。簡単だが、タイミングのズレが生じやすい。
◇ アーンド・インカード・ベイシス損害率(Incurred to Earned Basis Loss Ratio)
計算方法
分子 : 期間中に発生した事故の保険金(支払備金の繰入・戻入も加味)
分母 : 期間中の責任が経過した分の保険料のみ(未経過保険料を除く)
指標が意味すること
"発生ベースの損害率"を示します。分母と分子の期間整合がとれており、決算数字を用いて算出できるため、決算や料率検証で広く使われる方式です。一方で支払備金の調整が必要になるなど、算出に手間がかかります。
居酒屋で言うと:「今月発生したクレーム対応費用(まだ未払いのものも含む見積もり) ÷ 今月実際に提供した料理の売上」。提供した分と発生した損害を正確に対応させる、最も実態に近い計算方法。
◇ ポリシーイヤーベイシス損害率(Policy-Year Bases Loss Ratio)
計算方法
分子 : 期間中に引き受けた契約で発生した事故の保険金(将来の支払いも含む)
分母 : 期間中に引き受けた契約の保険料
指標が意味すること
"引受契約ベースの損害率"を示します。ある期間に引き受けた契約の保険料に対して、その契約全体で発生した保険金の比率を示すため、引受成績の評価に優れています。ただし保険金の支払いが完了するまで確定しないため、把握に時間がかかるという欠点があります。
居酒屋で言うと:「今年販売した年間会員パックの売上に対して、その会員が1年間に使ったクレーム対応費用の合計」。契約単位で成績を評価できるが、年度が終わるまで最終的な数字がわからない。
まとめ
指標 | 特徴 | 主な用途 |
リトン・ペイド・ベイシス | 簡単だが、期間不一致あり | 営業現場の傾向把握 |
アーンド・インカード・ベイシス | 期間整合できる 算出に手間がかかる | 決算・料率検証 |
ポリシーイヤーベイシス | 引受単位で評価できる 把握に時間かかる | 引受成績の精緻な評価 |
3つの方式はそれぞれ「簡単さ」「正確さ」「引受単位での評価」というトレードオフの関係にあります。目的に応じて使い分けることが重要です。



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