経営指標 - 収益性・効率性 -
- 俊輔 藤﨑
- 5月19日
- 読了時間: 3分
更新日:7月8日

保険会社の経営状況を把握するにあたり、受け取った保険料と支払った保険金の割合を示す「損害率」が利用されます。収入保険料に対する社費の割合で、保険会社の効率性を示す指標として「事業費率」も利用されます。また、「損害率」と「事業費率」を足したものを「コンバインド・レシオ」と呼び、収益性を測る指標として利用されます。
以下、簡単に概要を記載します。
◇ 正味損害率 計算方法
個々の契約の保険金支払額と損害調査業務や保険金支払業務に付随して発生する人件費・物件費・税金等の金額を分子とする
個々の契約者との直接の保険契約にかかる収入を分母とする
指標が意味すること
“保険引受成績”を示します
正味支払保険金に損害調査費を加え、正味収入保険料で除した割合を“正味損害率”と言い、その会社の保険引受成績の状況を示します。 公表損害率あるいは、単に損害率とも言います
◇ 正味事業費率 計算方法
保険の募集・販売を行う営業部門や一般管理部門等の経費+代理店手数料・仲立人手数料・募集費・集金費・受再保険手数料の合計金額から出再保険手数料を差し引いた金額を分子とする
個々の契約者との直接の保険契約にかかる収入を分母とする
指標が意味すること
“経営効率”を示します
諸手数及び集金費に保険引受に係る営業費及び一般管理費を加え、正味収入保険料で除した割合を正味事業費と言い、保険会社の経営の効率性を示します。
単に事業費率と言う場合もあります
◇ コンバインド・レシオ(Combined Ratio)
計算方法
上記の「正味損害率」と「正味事業費率」を足し合わせる
指標が意味すること
“収益性”を示します
損害率と事業費率を足した保険料収入に対する保険金支払いと事業費の支出の割合を示すもの。数値が低いほど収益力は高く、100%を超えると、収入よりも支出の方が大きいとみなされ、保険引受損失を被っていると評価されます

保険の引受成績を示す「損害率」は計測期間等の考え方で算出方法が異なります。代表的なものとして、「リトン・ペイド・ベイシス」「アーンド・インカード・ベイシス」「ポリシーイヤーベイシス」があります。
以下、簡単に概要を記載します。
◇ リトン・ペイド・ベイシス損害率(Written Paid Basis Loss Ratio)
計算方法
期間中に支払いがあった保険金を分子とする
いつ契約されたかに関わらず、会計上受け取る保険料を分母とする
指標が意味すること
“支払ベースの損害率”を示します
最も簡単に計算することができる一方、分母と分子の期間整合がとれていないため、実態を把握することが困難なケースがあります。営業現場等である集団の傾向を把握するためによく利用されています
◇ アーンド・インカード・ベイシス損害率(Incurred to Earned Basis Loss Ratio)
計算方法
期間中に発生した事故の保険金を分子とする(備金の繰入・戻入も加味する)
期間中の契約時期を加味し、責任が経過した分の保険料のみ分母とする
指標が意味すること
“発生ベースの損害率”を示します
分母と分子の期間整合がとれており、いずれも経理上の決算数字を用いて算出することができるため、広く決算や料率検証に利用されています。一方で支払備金の調整等、算出に手間がかかります
◇ ポリシーイヤーベイシス損害率(Policy-Year Bases Loss Ratio)
計算方法
期間中に引き受けた契約で発生した事故の保険金を分子とする
期間中に引き受けた契約の保険料を分母とする
指標が意味すること
“引受契約ベースの損害率”を示します
ある期間に引き受けた契約の保険料に対して、その契約で発生した保険金の比率で、引き受け成績を示します。保険金の支払いまで時間がかかるため、把握に時間がかかるケースがあります



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