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【損保業務_エ】 契約管理 (Policy Mgmt)

  • 2025年12月15日
  • 読了時間: 8分

損害保険の契約管理業務は、成立した保険契約の内容を維持・変更する「異動」と、ほぼ毎年到来する満期に対応する「満期更改」の2つで構成されています。生命保険の保全業務と目的は共通していますが、構造は大きく異なります。生保では数十年にわたる長期契約中の多様な変更手続き(12種類以上の異動処理)が業務の複雑さの主因であるのに対し、損保では1年更新の短期契約が主体であるため、毎年大量に発生する「満期更改」の処理量の多さが最大の特徴です。また、保険の対象物(車両・建物・設備等)の変更や自動車保険の等級管理、自動車保険特有の「中断」制度など、損保固有の異動処理が多く存在します。



異動 (Policy Maintenance)

成立した保険契約を正確かつ継続的に管理し、契約者の要望に応じて契約内容を変更する業務です。契約者情報・補償内容の変更、保険の対象物(車両・建物・設備等)の変更、保険金額の増減、特約の追加・削除、解約等の手続きを行います。変更内容に応じて保険料の追徴や返戻処理を行い、システムに反映した上で変更通知書を送付します


エ-1-1. 名義・住所等変更

  • 契約者の氏名変更・住所変更・連絡先変更等や被保険者の変更の申出を受け付け、必要書類(変更申請書・本人確認書類等)の不備チェックを行った上で、契約管理システムに登録します。変更内容に応じて通知書を発行し、関連する後続手続き(口座振替の変更等)の案内も行います。保険の対象を含む住所変更は居住地変更による保険料の再計算が必要になる種目もあるため、変更内容に応じた処理が求められます

エ-1-2. 保険の対象変更

  • 車両の入替・建物の増改築・設備の追加等、保険の対象物が変わる申出を受け付け、変更後の対象物のリスクを確認・評価します。リスクに応じた補償内容・保険金額・保険料を再計算した上で、契約管理システムに反映します。適宜、変更前後の日数按分による保険料の追徴・返戻処理、変更通知書の送付を行います。自動車保険の車両入替では、新車両の型式・用途・等級の確認と引継ぎ処理が伴います

エ-1-3. 補償内容変更

  • 補償の追加・削除・保険金額の増減等の申出を受け付け、必要書類・不備チェックを行い、過去の事故履歴や引受規定を確認した上で、追加する補償部分の引受査定を行います。補償を減らす場合は査定不要ですが、未経過保険料の計算が必要です。変更後の補償内容・保険料を契約に反映し、変更通知書を送付します

エ-1-4. 払込方法変更

  • 口座振替・クレジットカード・払込票等の払込方法を別の方法に変更する申出を受け付け、必要書類(口座振替依頼書・カード情報等)を確認した上で、システムに新しい払込方法・変更適用日を登録し、収納代行業者に連携する請求データにも反映します。払込方法の変更は収納システム(ウ-2)との連携が必要であり、変更タイミングと収納の締め処理のスケジュールを考慮した設計が求められます

エ-1-5. 中途更改

  • 補償内容・保険金額・対象物・保険期間等を大きく変更する必要がある場合に、既存契約を解約して終了させ、変更後の申込内容で新たに契約を締結して成立させます。未経過期間の保険料精算に加え、通常の新契約と同様にシステム登録・計上・保険証券の発行等を行います。既契約の解約と新契約の成立が同時進行するため、処理の順序と両契約の整合性管理が重要です

エ-1-6. 解約

  • 解約の申出を受け付け、必要書類の取付・不備チェックを行った上で、未経過部分の保険料返戻の有無・金額を算定し、契約管理システムに解約処理を反映します。契約者に解約に伴う注意事項(補償の消滅・等級への影響等)を案内し、保険料の返戻処理・解約通知書の送付を行います。解約は補償が完全に消滅する不可逆的な手続きであるため、本人確認の徹底と意向確認が重要です

エ-1-7. 中断

  • 車の廃車・海外転勤・長期入院等の理由で自動車保険を一時的に使用しなくなる場合に、契約を中断する手続きです。中断要件を満たす事実(廃車証明・出国証明等)を確認した上で、契約の中断処理を行い、中断証明書を送付します。中断期間中は補償がなくなりますが、所定期間内(一般的に10年以内)に再加入する場合は中断時の等級を引き継ぐことができます。この等級引継ぎが損保固有の制度であり、中断証明書の正確な管理が求められます


業務の特徴と難しさ

保険の対象物の変更が頻繁に発生する

  • 損保の異動では、自動車保険の車両入替・建物の増改築・設備の追加等、保険の対象物そのものが変わるケースが生保にはない固有の処理として頻繁に発生します。変更後の対象物に対してリスク評価を再度行い、補償内容・保険金額・保険料を再計算する必要があり、種目ごとに評価ポイントが異なります

等級管理の複雑さ(自動車保険)

  • 自動車保険では、事故歴に応じてノンフリート等級(1〜20等級)が設定され、等級によって保険料が大きく変わります。異動・解約・中断・再契約のたびに等級の引継ぎ管理が必要であり、等級の誤りは契約者への過大・過小請求に直結します。等級管理は損保の契約管理システムにおける最も複雑なロジックのひとつです

異動処理後の保険料精算の複雑さ

  • 異動が契約期間の途中で発生した場合、変更前後の日数按分による保険料の追徴・返戻計算が必要です。補償内容・保険期間・払込方法が組み合わさることで計算パターンが多岐にわたり、基幹システムが自動処理する部分と手動確認が必要な部分が混在します

書類の不備対応と処理品質の維持

  • 異動手続きは代理店経由で申請書類が提出されますが、記載漏れ・添付書類の不足等の不備が多発します。不備を見落として処理を進めると後工程で大きなトラブルになるため、受付時の不備チェックと照会・再提出の管理が重要です

後続システムへの連鎖的影響

  • 異動処理で変更された内容は、収納(保険料の変更)・損害サービス(補償内容の変更)・会計(計上保険料の変更)・代理店管理(手数料の変更)の各システムに連鎖的に反映されます。処理の誤りが複数のシステムに波及するため、変更処理の正確性と連携設計の精度が特に重要です




満期更改 (Renewal)

契約期間が満了する保険契約を更新(更改)し、継続的に補償を提供するための手続きです。満期を迎える契約情報をもとに、新しい補償内容・保険料を算出し、代理店や契約者へ更改案内を送付します。必要に応じて契約内容・補償条件・保険料の見直しを行い、顧客ニーズに合わせた提案を行います。契約者からの承諾後は更新契約をシステムに登録(計上)し、保険証券(継続証)を発行します。満期更改は損保の契約管理における最大の業務ボリュームであり、補償の継続と顧客との関係維持を支える要です


エ-2-1. 更新案内・見積作成

  • 満期前(通常2〜3か月前)に契約者へ更改案内を送付し、現在の契約内容・事故歴を踏まえて次年度の補償内容・保険期間・保険料を提示します。代理店は契約者の意向を確認して補償内容の見直しや引受条件の調整を行った上で、更改申込書を準備し、契約者への説明を行います

エ-2-2. 更改申込

  • 代理店が顧客と更改契約を締結し、申込書類(データ)を保険会社に提出します。申込データを保険会社システムに取り込み、新契約と同様に申込内容・対象物の確認書類をチェックし、不備がある場合は代理店・募集人に照会して修正します

エ-2-3. 引受査定

  • 更改契約についても新契約と同様に、申込内容・対象物の情報・過去の事故歴・事業内容等を確認し、リスク特性や引受基準との整合性を確認した上で、引受可否・特別条件(免責設定・料率調整等)の必要性を判断します。前年の事故歴が多い契約では料率の見直しが発生するケースもあります。なお、企業向け大口案件では申込前に事前査定を行うケースも多くあります

エ-2-4. システム登録・計上

  • 引受査定後の契約内容(契約者・補償内容・保険の対象物・保険期間・保険料等)をシステムに反映し、保険料や引受規定との整合性を確認した上で、成立処理(計上)を行います。契約管理システムへの登録に加え、代理店システムにも成立した更改契約データを連携します。自動車保険では等級の更新処理も同時に行われます

エ-2-5. 証券発行

  • 成立した更改契約の情報をもとに保険継続証データを生成し、証券発行業者に連携します。印紙税等の関係で、更改契約では保険証券の代わりに継続証を発行するのが一般的です。発行業者にて紙の継続証の印刷・郵送、または電子の継続証の発行・通知を行います

エ-2-6. 自動更新

  • 自動継続が適用される契約について、満期日までに契約者から継続しない旨の申出がなければ、無保険期間の発生を防ぐために、同一または所定の条件で契約を自動的に更改します。保険料の請求・継続証の発行を自動で行います。自動更新後の取消しはできず、解約手続きが必要となるため、契約者への事前案内が重要です


業務の特徴と難しさ

大量処理への対応

  • 損害保険は1年更新の短期契約が主体であるため、毎年大量の満期更改処理が発生します。自動車保険・火災保険等の主力種目では、時期によっては1日に数万件規模の更改処理が集中することもあり、システムの処理能力と運用体制の両面での対応が不可欠です。生保の満期更新とは比較にならない処理量が損保の最大の特徴です

継続率管理の重要性

  • 満期更改は、他社への乗り換えが最も発生しやすいタイミングです。更改案内の送付タイミング・内容・代理店によるフォロー体制が継続率に直結します。継続率は代理店評価や保険会社の収益性にも影響するため、更改業務の質が経営指標に直結します

等級・事故歴の正確な引継ぎ

  • 自動車保険の更改では、前年の事故歴に基づく等級の更新が必要です。無事故であれば1等級上がり、事故があれば事故の種類に応じて等級が下がります。等級の計算ミスは保険料の過大・過小請求に直結するため、等級管理システムの正確性が特に重要です



損害保険会社の業務一覧はこちらを参照ください。

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