top of page

生命保険会社の主な業務内容

  • 執筆者の写真: 俊輔 藤﨑
    俊輔 藤﨑
  • 11月4日
  • 読了時間: 10分

更新日:11月10日

生命保険業界の商流(バリューチェーン)として、「商品開発/マーケティング」、「募集」、「引受」、「保全」、「支払」、「顧客・代理店管理」、「資産・リスク管理」、その他一般企業と同様の人事・総務等の「コーポレート・インフラ」に整理し、さらに生命保険会社の組織図と基幹システムの機能分類等を踏まえて、もう一段細分化した業務領域に分けました。各業務領域の中で、生命保険会社がどのような業務を行っているか大まかに記載します。


ree

ree


ree

ree

ree

◆商品開発マーケティング (R&D・MA)

商品企画・開発 (Product Planning)

  • 顧客ニーズや社会環境の変化に合わせて、新しい保険商品を設計・開発する業務です。市場調査や統計データをもとに、どのような保障内容・保険期間・保険料設定が求められているか分析し、アクチュアリー(保険数理の専門家)とも連携しながら、保険料率、給付条件、収益性等を算定しながら保険商品の開発を行います。金融庁への商品認可対応や社内システムへの反映、販売チャネル向けの説明資料作成も行います


マーケティング (Marketing)

  • 企画・開発した保険商品の販売施策を企画・実行する業務です。市場調査や顧客データ分析を通じてターゲット層を特定し、チャネルごとの販売計画やキャンペーン設計を行います。また、テレビCM・Web広告・SNS等を活用してブランド認知を高め、営業職員や代理店を支援する販促資料の作成も行います。契約後の顧客満足度や解約率の分析を通じて、サービス改善やクロスセル戦略にもつなげるなど、「顧客の獲得から維持」までを一貫して支える役割を担っています


◆募集 (Distribution)

募集(営業) (Sales)

  • 見込み顧客に保険内容を説明し、契約を申し込んでもらう営業活動全般を指します。営業職員・代理店・銀行の窓販担当者等が、顧客のライフプランや家族構成・将来リスクに応じて最適な保険商品を提案し、補償内容を理解・納得してもらったた上で、申込書・告知書等への署名取り付けます。営業活動は、生命保険会社にとって収益の入り口となる最前線の業務であり、近年はオンライン面談やデジタル申込など、非対面での募集も拡大しています


募集人管理 (Agent Management)

  • 保険を販売する営業職員や代理店(=募集人)が法令や社内ルールを守って適正に活動できるよう管理・支援する業務です。募集人の登録・資格管理、資格取得の研修や商品知識や販売スキル向上のための教育、販売実績や募集人品質を踏まえたや資格査定等を行います。また、法令違反や不適切募集を防ぐためのコンプライアンス教育や、指導・処分の対応も含まれます。生命保険は顧客の信頼が基盤となる商品であるため、募集品質の維持・向上に向けたガバナンス機能を担います


代理店支援 (Agency Support

  • 保険販売を行う代理店が円滑かつ適正に営業活動を行えるように支援・管理する業務です。代理店への商品説明や販売研修の実施、販売ツールやシステムの提供、営業推進施策の企画などを行います。また、新規販売網の開拓や顧客リレーションシップ深耕の支援、募集品質のモニタリングを受けた法令遵守や顧客対応の品質改善もサポートします。代理店は保険会社の重要な販売チャネルの一つであり、代理店支援業務はそのパートナー関係を強化する役割を担っています


◆引受 (Underwriting)

新契約 (Agent Management)

  • 顧客が申し込んだ保険契約を正式に成立させるまでの一連の手続きを行う業務です。申込書や告知書の内容を確認し、健康状態・申込経路・職業を含む属性をもと保険を引き受けるかどうかを判断する「査定(アンダーライティング)」を行います。その後、保険料の入金確認や契約内容の登録を経て、保険証券を発行します。新契約業務は、正確性とスピードが特に重要であり、誤りがあると将来の支払いや顧客トラブルにつながるため、厳密な審査体制が求められます


請求・収納 (Billing & Collection

  • 顧客が申し込んだ保険契約を正式に成立させるまでの一連の手続きを行う業務です。申込書や告知書の内容を確認し、健康状態・申込経路・職業を含む属性をもと保険を引き受けるかどうかを判断する「査定(アンダーライティング)」を行います。その後、保険料の入金確認や契約内容の登録を経て、保険証券を発行します。新契約業務は、正確性とスピードが特に重要であり、誤りがあると将来の支払いや顧客トラブルにつながるため、厳密な審査体制が求められます


◆保全 (Policy Mgmt)

契約保全 (Policy Maintenance

  • 成立した保険契約を正確かつ継続的に管理し、契約者の要望に応じて契約内容を維持・変更する業務です。名義・住所・受取人の変更、保険金額の増額・減額、払済や延長保険への変更、転換・復活や解約等の手続きを行います。また、契約者への貸付・返済等の対応も含まれます。保険会社にとって、契約成立後の顧客との関係を守るための重要な業務であり、正確性と迅速な対応が求められる業務です


◆支払 (Claim)

保険金・給付金支払 (Claim Payment)

  • 契約者や受取人からの請求に基づき、保険金や給付金を適正かつ迅速に支払う業務です。死亡保険金・入院給付金・手術給付金・満期金等の請求を受け付け、契約内容や請求書類を確認し、支払可否を判断(査定)します。不正請求を防ぐため、必要に応じて医療機関や関係者への確認を行います。保険会社の社会的使命である万が一の歳に確実に保障することを実現する重要な役割を担っています


◆顧客・代理店管理 (Customer & Agency Mgmt

顧客サービス (Customer Services

  • 契約者や見込み顧客からの照会・請求を受け付け、保険を利用できるよう支援する業務です。名義や住所変更等の保全手続きに関する問い合わせ、保険金の請求等、照会内容に応じて電話・メール・チャット等で対応します。また、各種手続きの案内、書類の郵送、Webサービスの利用サポートも行い、必要に応じて担当部門への取次も行います。顧客と会社をつなぐ重要な接点であり、迅速で丁寧な対応が顧客満足度と信頼向上につながります


顧客情報管理 (Customer Relationship Management

  • 契約者や見込み顧客の個人情報を正確・安全に管理し、業務で適切に活用できるようにする業務です。顧客属性(氏名/住所/生年月日等)・契約内容・健康状態・コンタクト履歴・苦情内容等のデータをシステム上で一元管理し、更新や訂正を行います。また、個人情報保護法や社内規程に基づき、アクセス権限の管理やデータの暗号化、漏えい防止対策を行います。顧客対応やマーケティング、保全・支払等の生命保険会社の業務の基盤となる重要な機能を担っています


代理店管理 (Agency Management

  • 代理店が法令や社内規程を遵守し、適正に保険募集を行うよう監督・管理する業務です。代理店の登録、募集人管理、手数料の支払い管理、販売実績や苦情状況のモニタリングを行います。また、コンプライアンス違反や不適切募集を防ぐための定期的な点検・指導、代理店評価・査定等も含まれます。保険販売の健全な取引関係を維持し、顧客保護を徹底するために欠かせない販売の質を守るための統制機能を担っています


◆資産・リスク管理 (Investment Risk Mgmt

共同保険 (Co-Insurance

  • 大口契約や高額なリスクを複数の保険会社が分担して引き受ける業務です。大規模工場や商業施設、航空機、船舶等の1社だけで引き受けるとリスクが集中する契約について、複数の保険会社が一定の割合で責任を分け合います。この際、契約管理や保険金支払などの事務を代表して行う「幹事会社」と、分担で引き受ける「分担会社」に分かれます。共同保険によって、各社はリスクを分散しつつ、顧客は十分な補償を確保できます。つまり、大規模リスクへの対応と市場の安定を両立させる、保険会社間の協調的な引受業務です


再保険 (Re-Insurance

  • 自社が引き受けた保険契約の一部を他の保険会社(再保険会社)に移転して、リスクを分散・軽減する業務です。災害や大規模な死亡事故等で多額の保険金支払いが発生する可能性がある場合、その一部を再保険会社に引き受けてもらうことで、経営への影響を抑えます。再保険には、手続きの分類により「任意再保険」・「特約再保険」、責任分担の分類により「比例再保険」・「非比例再保険」の種類があります。生命保険会社の財務の安定性と健全経営を守るために欠かせない仕組みであり、リスク管理の要となる業務です


資産運用・管理 (Asset Management

  • 契約者から預かった保険料を安全かつ効率的に運用し、将来の保険金支払いに備える業務です。国債・社債・株式・不動産・投資信託等に分散投資を行い、安定した収益を確保します。同時に、金利変動や為替変動、信用リスク等を管理し、資産と負債のバランスを最適化する「ALM(資産負債総合管理)」を実施します。また、運用結果を分析し、経営戦略や商品設計にも反映します。生命保険会社の収益性と財務の健全性を支える中核機能であり、将来の契約者への保険金や配当金等の約束を守るための資金管理という役割を担っています


◆コーポレート/インフラ (Corporate Infrastructure)

情報システム (Information System

  • 会社全体の業務を支えるシステムやITインフラを企画・開発・運用する業務です。契約・収納・支払といった基幹システムの設計・保守、顧客データベースや営業支援ツールの開発、ネットワークやサーバーの運用管理などを行います。また、AIやRPAを活用した業務効率化、オンライン申込や顧客ポータルなどのデジタルサービス開発や個人情報を扱う企業としてセキュリティ対策も行います。業務の安定稼働とデジタル変革を両立させる、生命保険会社のIT全般を担う業務です


法務・コンプライアンス (Legal Compliance Audit

  • 一般企業の法的リスク管理に加え、保険業法を中心とした金融規制と顧客保護義務を担当します。保険商品は契約内容や広告表現が法令に基づく厳格な審査を要するため、商品開発段階から関与し、約款や募集文書のリーガルチェックを行います。営業職員や代理店が保険募集ルールや個人情報保護法、金融庁ガイドラインを遵守しているか監督し、定期的な教育・内部監査を実施します。また、苦情・不祥事対応や内部通報制度の運用、当局への報告も行います。法令遵守と公正な営業活動を支える生命保険会社のガバナンスの要です


人事 (Human Resources

  • 採用・評価・給与・研修等を担うことに加え、営業職員を中心とした大規模かつ多様な人材管理を担当します。全国に数万人規模の営業職員を抱えるため、採用から教育、配置、業績評価に至るまで体系的な人事運営を行います。営業職員向けには、募集人資格の取得支援、コンプラ教育、モチベーション維持のための表彰制度等を運営します。アクチュアリー・システム・法務等の専門性の高い人材も管理し、長期雇用を前提としたキャリア形成支援やWLB推進も行います。営業力の強化と専門人材の育成等、持続的成長を支える中核機能です


総務 (General Affairs

  • 一般企業の社内設備、文書管理、株主対応等に加え、金融機関としての社会的責任や大規模組織の管理業務を担当します。全国に展開する支社・営業所の施設管理や備品手配、災害時の事業継続計画(BCP)の策定・運用等の統制、個人情報や重要文書を扱うための契約書・印章・顧客資料の管理体制の構築・運用を行います。また、取締役会等の法定会議の運営や、監督当局への報告対応も担います。加えて、社会貢献活動やCSR推進を担当する場合も多く、企業の公共性や信頼を支える機能を担います


経理・財務 (Finance・Treasury

  • 生命保険会社は、長期契約を前提とする生命保険特有の仕組みから、将来支払う保険金や年金に備えて「責任準備金」を積み立てる必要があり、アクチュアリーの計算をもとに計上・管理します。保険料収入・保険金支払に関する収益・費用を長期間に見積って計上し、会社の健全性を示す「ソルベンシー・マージン比率」を管理し、金融庁への報告対応も行います。資産運用部門と連携してALM(資産負債総合管理)を行い、金利リスクを最小化する等のリスク管理もします。保険業法やIFR17等の会計基準に対応する必要があり、高度な専門知識が求められます。会計・金融・リスク・規制対応を統合的に担う中核業務となります


コメント


bottom of page